領土、関税…トランプ氏「19世紀の栄光」への憧憬 政権発足へ1週間、身構える世界
産経ニュース / 2025年1月12日 21時49分
トランプ次期米大統領の発言が世界を揺らしている。中米パナマ運河やデンマーク自治領グリーンランドを掌握する「領土的野心」をあらわにしたかと思えば、国際貿易を損ねる関税強化を繰り返し公言している。トランプ氏を突き動かすのは、高関税の壁で自国を囲い、領土拡張をためらわなかった19世紀末の第25代大統領マッキンリー(1843~1901年)への憧れだといわれる。
「彼は偉大な大統領だった。マッキンリー山の名前を取り戻す。彼はそれに値する」
トランプ氏は昨年12月下旬、西部アリゾナ州で演説した際、北米最高峰のデナリ山(西部アラスカ州、6190メートル)を巡り、そう宣言した。
かつてマッキンリー山と呼ばれたが、当時のオバマ大統領が2015年、先住民族が使う呼び名に改名した。トランプ氏は「米国で膨大な金を生み出した」とマッキンリーへの敬愛の情を示した。
マッキンリーはフィリピンやハワイを併合し、キューバを保護国化。帝国主義列強として米国の地位を確立した。高関税を課すマッキンリー法を成立させるなど、保護主義を前面に打ち出した。
トランプ氏は、マッキンリーが大統領を務めた19世紀末を理想視し、米国の最盛期だったと位置づける。昨秋の選挙集会では「1890年代、米国は恐らく最も豊かだった。関税の制度があったからだ」と言及し、マッキンリーを称賛した。
トランプ氏の国際感覚は19世紀の帝国主義時代に似ていると指摘されるようになった。領土の拡張に武力行使も排除しないと示唆したためだ。
今月7日、南部フロリダ州の私邸マールアラーゴで記者会見したトランプ氏は「安全保障上、不可欠だ」としてパナマ運河やグリーンランドの領有に強い意欲を示した。実現のために軍事的、経済的な実力行使さえ、排除しない姿勢をみせた。
トランプ氏は「51番目の州にする」と息まくカナダにも関税強化をちらつかせる。その同国のトルドー首相は6日、支持率低迷から辞任を表明。司令塔を欠いた同国の危機感は深い。
米国が関税を発動した場合の報復として、米国産品に関税を発動する「主戦論」まで出ている。トランプ氏就任前から米カナダ間の摩擦は深まっている。
「米国第一」の矛先を向けられ、トランプ氏の真意を測りかねる外国首脳は、国内の突き上げを食らいながら、強い姿勢を示さざるを得ない。
米国は南北戦争を終えた19世紀後半、産業と経済が大きく発展し、「金ぴかの時代」と称された。トランプ氏は今月7日の会見で、「米国の黄金時代に向けた夜明けが近づいている」と強調し、米国の最盛期を再現すると語った。(ワシントン 塩原永久)
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