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カーター元米大統領、在韓米地上軍の撤退を模索 日本の安全脅かす 村田晃嗣氏に聞く

産経ニュース / 2025年1月9日 13時3分

同志社大の村田晃嗣教授(須谷友郁撮影)

昨年12月29日に100歳で死去したジミー・カーター元米大統領(民主党)の国葬が9日に執り行われる。カーター氏が在任した1977年から81年、日本では福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸の各元首相が政権を担ったが、当時のカーター氏は在韓米地上軍の撤退を目指し、日本の安全を脅かした。「大統領の挫折―カーター政権の在韓米軍撤退政策」の著書がある同志社大の村田晃嗣教授に、カーター政権時の日米関係について聞いた。

――カーター氏はなぜ在韓米地上軍を撤退させようとしたのか

「カーター氏は外交の基本に人権尊重を置く『人権外交』を展開したが、その一環として、強権的な政治を進める韓国の朴正熙政権に懲罰を加えようとした。韓国のような小国から米軍を動かすことなど、最高司令官である大統領として簡単にできると思った」

――しかし、韓国から米軍の地上部隊がいなくなったら軍事バランスが崩れて、日本は北朝鮮の脅威に直接さらされる

「人権重視と言いながら、安全保障のことを考えず、整合性のない外交だった。韓国には強く出ても、イランのパーレビ国王の開発独裁には何も言わなかった」

――日本政府はどう対応したのか

「モンデール副大統領が来日したとき、福田首相は在韓米地上軍撤退について『米韓の2国間の問題に干渉する権利はない』と逃げを打った」

――なぜか

「福田首相は内心では撤退に憂慮していたと思うが、反対したら米国から『じゃあ防衛力を増強しろ』と言われるし、野党からは『軍縮に反対するのか』と批判されると考えたのだろう」

――撤退の動きはその後どうなったのか

「北朝鮮の軍事力がそれまでの米国の推測より大きいという情報が流れ、日米の言論界でも撤退反対の声が高まった。カーター政権は1979年7月、撤退を80年の次期大統領選後まで延期すると決めた。その後、朴大統領が暗殺され、撤退など論外となった」

――カーター氏は大統領選でレーガン氏(共和党)に惨敗し、1期4年で退任した

「もしカーター政権が続き、在韓米地上軍撤退が行われていたら、日本の安全保障にとって深刻な事態になっただろう」

――カーター政権は中国との国交を正常化した

「カーター氏の前のフォード大統領(共和党)も次のレーガン氏も日本重視だったが、カーター氏のアジア政策は中国基軸だった。後に首相となった安倍晋三氏が民主主義や法の支配、基本的人権を普遍的価値観として尊重する『価値観外交』を掲げたが、当時の日本にはカーター氏の人権外交に付いていく覚悟がなかった。その上に中国基軸政策なので、カーター政権の4年間は日米関係がやや漂流した時期と言えるだろう」(聞き手・渡辺浩)

むらた・こうじ 昭和39年、神戸市生まれ。同志社大法学部を卒業し、神戸大大学院法学研究科博士課程修了。専門は米国外交、安全保障政策。広島大助教授のときに「大統領の挫折―カーター政権の在韓米軍撤退政策」でサントリー学芸賞。平成17年から同志社大教授。25年から3年間、学長を務める。防衛省参与なども歴任。近著に「大統領たちの五〇年史―フォードからバイデンまで」。産経新聞「正論」執筆メンバー。

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