トランプ氏「ガザ所有」案の衝撃 和平プロセス崩壊させる破壊力、国際規範軽視際立つ
産経ニュース / 2025年2月5日 19時44分
トランプ米大統領は4日、パレスチナ自治区ガザの戦後処理を巡り、米国がガザを「所有」するとの構想を明らかにした。第2次政権発足時に表明した「領土拡大」に沿った内容だ。一方で同構想は、米国をはじめとする国際社会が目指してきたイスラエルとパレスチナ国家による「2国家共存」に向けた和平プロセスを土台から崩すものだといえ、米国の中東外交を根本から作り替える破壊力を持つ。
トランプ氏の構想の前提となっているのは、ガザから「すべてのパレスチナ人」をエジプトやヨルダンなどの第三国へ強制移住させるとの案だ。実質的にガザを無人にし、米国が開発事業に責任を負うとする。トランプ氏は4日の記者会見で、地中海北岸の欧州の高級保養地になぞらえ、ガザは「中東のリビエラ」になると豪語した。
同時にトランプ氏は、ガザ住民にとってはガザの域外に出ることが「幸せだ」としつつ、将来的な帰還には否定的な姿勢をみせた。
1993年のオスロ合意を起点とする中東和平プロセスは、パレスチナがヨルダン川西岸とガザを領土とする独立国家を樹立し、イスラエルとの共存を図るとの発想に基づいて積み上げられてきたものだ。歴代の米政権はこれを主導し、プロセス前進を目指してきた。
「2国家共存」支持明言せず
しかし、トランプ氏は会見で「何度も失敗してきたことを繰り返すのか」とし、「2国家共存」への支持を明言しなかった。
同氏は第1次政権の2020年にも、国際法に違反する西岸や東エルサレムのユダヤ人入植地の多くに、イスラエルの主権を認めるなどとする独自の「中東和平案」を公表している。今回浮上した米国による「ガザ所有」構想は、従来のイスラエル寄りの立場に、商業的利益を重視する自身の「米国第一」主義を加味したものだ。
トランプ氏は第2次政権で、デンマーク自治領グリーンランドやパナマ運河、カナダへの領土的野心を公言し、軍事力行使も排除しないとしてきた。ガザに対しても米軍派遣を否定はしていない。
透けてみえるのは、武力などによって当事者を無視した領土変更は認めないとする国際規範の軽視だ。トランプ氏は、米国が主導してきた第二次大戦後の世界秩序を自らの手で突き崩している。(ワシントン 大内清)
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