トランプ政権1週間 不法移民、多様性巻き返し…一気に断行 関税は猶予で交渉余地も
産経ニュース / 2025年1月26日 20時21分
第2次トランプ米政権は27日、発足から1週間を迎える。トランプ大統領は不法移民対策や多様性推進の巻き返しといった重点施策を一気に断行しており、政権運営に弾みをつける狙いだ。一方で中国などへの輸入関税の引き上げは猶予し、交渉の余地を残す硬軟両様の構えもみせる。
出生地主義も見直し
トランプ氏は、厳格な国境管理や不法移民の大量送還に向け、矢継ぎ早に指示を出した。米国で生まれた子供に市民権を認める「出生地主義」の見直しにも踏み込み、米国の〝純化〟を志向しているようだ。
23日には拘束された不法移民を強制送還する軍用機の第1陣が米国を飛び立ち、数百人が中米グアテマラなどに運ばれた。トランプ氏は25日、西部ラスベガスで支持者集会を開き、「(不法移民の)多くは犯罪者や殺人者だ。やつらを追い出す」と気勢を上げた。
トランプ氏は就任初日、メキシコ国境地帯に国家非常事態を宣言し、大統領令を連発。密入国者や不法滞在者の排除だけでなく、合法的手段での入国にも制限が始まっている。米メディアによると20日以降、バイデン前政権で導入された難民申請の「事前予約」制度を利用して国境に到着した数千人が、申請の受理を拒まれてメキシコ側にとどまっているという。
国境に軍部隊を配備する動きも加速する。これまで州兵や予備役を中心に約2500人だった態勢に、海兵隊と陸軍から計約1500人を増派。AP通信によると、国防総省は「これは始まりにすぎない」とした。
大統領令では「出生地主義」を見直し、両親のいずれかが米国人か米永住権(グリーンカード)保持者でなければ市民権付与を拒否するとした。西部シアトルの連邦地裁は23日、この大統領令は「違憲だ」として効力の仮差し止めを命令。司法闘争の激化は必至だ。
「米国第一」外交が始動
「米国第一」に基づく外交にも乗り出した。地域の安定を促す一方、紛争への関与は控える方針だ。
22日にはサウジアラビアのムハンマド皇太子と電話会談し、中東地域の安定やテロ対策を協議。皇太子から、今後4年間で対米投資と貿易を6千億ドル(約94兆円)拡大するとの意向が示されたという。
23日には中米エルサルバドルのブケレ大統領と電話会談し、中南米から米国に流入する不法移民問題などを協議した。
ルビオ国務長官は21日、日米豪印の協力枠組み「クアッド」外相会合を開催。一方で、中国の王毅(おう・き)共産党政治局員兼外相と24日に電話で会談した。トランプ氏は中国の習近平国家主席との会談に意欲を示しており、意思疎通の継続を図っている。
「性別は男性と女性だけ」
トランプ氏は就任初日に政府の公式方針として「性別は男性と女性の2つだけとする」と宣言し、「生物学的な男女」のみを性別として認めるとする大統領令に署名した。
教育現場や米軍からトランスジェンダー当事者を締め出すと主張。就任前日にはトランスジェンダーの選手を学校の「女子スポーツから排除する」とも述べた。バイデン前政権が進めた少数派の権利向上を通じて社会の活性化を目指す「多様性・公平性・包括性(DEI)」の推進停止も表明。各省庁にも、民間企業にDEI推進の停止を促すよう命じる大統領令に署名した。
経済・通商分野では、公約した輸入品への関税引き上げを発動していない。関税発動までの猶予期間を置き、交渉の余地を残したとみられる。
カナダ、メキシコからの物品に関税25%を上乗せするとしたが、実施は2月からとし、公約だった即時実施から先送りした。中国製品に課す税率は60%と公言していたが、現状は10%引き上げるとだけ言及し、強硬な姿勢を後退させた。
米政権は、麻薬性鎮痛剤フェンタニルの密輸や不法移民の流入を取り締まるよう、カナダやメキシコに求めている。
(ワシントン 塩原永久、坂本一之、大内清、ニューヨーク 本間英士)
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