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「フリーダム」vs「Y.M.C.A.」 分断の米大統領選では集会の音楽も二極化

産経ニュース / 2024年11月3日 14時0分

5日投開票の米大統領選を控え、民主党のハリス副大統領(60)と共和党のトランプ前大統領(78)が全米各地の支援者集会に出席し、票獲得の追い込みを図っている。集会では、民主党が人気歌手、ビヨンセさんの「フリーダム」など比較的新しい流行曲を流す一方、共和党はカントリー音楽や往年のヒット曲「Y.M.C.A.」といった「懐メロ路線」に傾いている。分断が際立つ両党の支持層は、音楽においても二極化の様相を呈している。

「米国は新たな歌を歌うときだ。私たちの声は、団結のハーモニーを奏でる」

ビヨンセさんは10月25日に南部テキサス州で開かれた民主党の集会で、約3万人の聴衆にこう訴えた。

ハリス氏はビヨンセさんの「フリーダム」を選挙のテーマソングにしている。「勝者は自分自身を諦めない」といった歌詞が支持者の共感を集め、集会を象徴する曲にもなっている。ハリス氏が米国民のフリーダム(自由)を守るのと同時に、トランプ氏が自由を傷つけている―という意味合いも込められている。

ハリス陣営はほかにも、女性ラッパーのミーガン・ジー・スタリオンさんをはじめ若者世代に人気のアーティストを集会に登場させたり、曲を使用したりするなどして若者票の呼び込みを狙う。男性優位の社会を批判したテイラー・スウィフトさんの「ザ・マン」なども象徴的だ。

これに対し、トランプ氏の集会ではよくカントリー音楽が流れる。代表的なのがトランプ氏支持者でもある歌手、リー・グリーンウッドさんの「ゴッド・ブレス・ザ・USA」だ。

「米国人であることを誇りに思う」など愛国的な内容に加え、ミネソタやテネシーなど具体的地名が多く歌詞に練り込まれていることから、会場が盛り上がる。トランプ氏支持の中核層は平均年齢が比較的高い白人男性であり、郷愁を誘う狙いもある。

1970年代後半のヴィレッジ・ピープルの「Y.M.C.A.」も定番曲の一つだ。トランプ氏は4年前の前回選に続き、今回も知名度が高く親しみやすいこの曲を使用。共和党集会に参加した東部ペンシルベニア州在住の白人男性、スコット・ジャニーさん(66)は「カントリー音楽は米国の宝だ。集会で『Y.M.C.A.』を踊るのも実に楽しい」と語る。

ただし、この曲はもともとゲイがモチーフとされており、反LGBTQ(性的少数者)の色彩が濃いトランプ陣営がテーマソングのように使用するのは矛盾しているとの見方もある。

米大統領選で使用される音楽は単なるBGMではなく、候補者のイメージや選挙戦自体が持つ性格を象徴している。ワシントン・ポスト紙(電子版)は「ホワイトハウスをめぐる争いが最終段階に入る中、両候補とも可能な限り多くのスターの力を利用しようとしている」と指摘する。

米政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の調査では、大統領選の行方を左右するといわれる接戦7州の両候補の支持率は、今月2日現在でトランプ氏が48・6%、ハリス氏が47・4%と拮抗(きっこう)。まだ期日前投票をしていない接戦州の有権者の動向が選挙結果を左右する可能性がある。両候補はアーティストと音楽を通じて「最後の一押し」を図っている。(ワシントン 本間英士)

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