老舗の作法 フィラデルフィアで「チーズステーキ」を食べてみた ポトマック通信

米東部フィラデルフィアの名物料理「チーズステーキ」の老舗「パッツ・キング・オブ・ステーキ」。政治家が庶民性をアピールするために立ち寄る定番の店となっている（大内清撮影）

11月の米大統領選で勝敗のカギを握る東部ペンシルベニア州の最大都市フィラデルフィアに、「チーズステーキ」なる名物料理がある。牛肉の薄切りをパンにたっぷりはさみ、ドロドロのチーズをかけた、かなりの高カロリー食だ。

手軽に楽しめる庶民の味だが、地元っ子に聞くとそれぞれに贔屓（ひいき）の店があって面白い。中でも市街地南部の「パッツ・キング・オブ・ステーキ」はこの料理を最初に売り出したとうたう老舗。親しみやすさを演出したい政治家が選挙中に訪れる店としても有名だ。

ただ、気をつけないと選挙戦のマイナスになる恐れもある。たとえば2004年大統領選では民主党のケリー候補が、同店で使われるイタリアンチーズの代わりに「スイスチーズを入れて」と要望したことを地元紙に酷評され、そのせいで人気が下がったという〝都市伝説〟まである。

今回の大統領選では、共和党副大統領候補のバンス上院議員が同店に立ち寄った。ケリー氏の轍（てつ）は踏むまいと意識しすぎたか、「私もスイスチーズは嫌い」と言わなくてもいい一言を口にし、店員から「別に嫌いなわけじゃない」とあしらわれたと報じられた。

先日、私も同じものを頼んでみた。店員はいかにも頑固そうなおやじさん。余計なことは言わずに黙って平らげた。（大内清）