米、再び政治暴力の影 共振し増幅する憎悪 トランプ氏2度目の暗殺未遂
産経ニュース / 2024年9月16日 17時50分
【ワシントン=大内清】11月に迫った米大統領選に再び「政治暴力」の影が伸びた。南部フロリダ州で15日に起きた、共和党のトランプ前大統領(78)に対する約2カ月で2度目となる暗殺未遂事件。大激戦が続く本選への影響は不透明だが、すでに修復困難なレベルに達している政治分断がいっそう深まる危険性は高い。
トランプ氏は、7月13日に東部ペンシルベニア州での選挙集会で耳に銃撃を受けながら支持者を鼓舞し、「死の淵から生還した指導者」とのイメージを得たことで一時は勝利を大きく引き寄せたと思われた。直後に中西部ウィスコンシン州で行われた共和党全国大会での指名受諾演説では、攻撃的な言動を抑制して「米社会の不和と分断は修復されなければならない」と語り、政治的分断の克服を訴えた。
しかし7月下旬、対立する民主党の候補がバイデン大統領(81)からハリス副大統領(59)にバトンタッチ。同党が急速に劣勢を挽回したこともあって、トランプ氏は、政敵を罵倒する従来の手法を再び強めた。
ハリス氏を「マルクス主義者」「極左」などと呼んで挑発するだけではない。今月10日のハリス氏との初討論では、不法移民の脅威を強調するため、ハイチ移民が「ペットを連れ去って食べている」などと事実に基づかない主張を繰り返した。今回の事件の数時間前には、自身の交流サイト(SNS)で、ハリス氏支持を表明した世界的人気歌手テイラー・スウィフトさんに対し「大嫌いだ!」と当たり散らした。
ハリス氏も、今回の大統領選は「未来」を志向する人々と、トランプ氏を支持する「過去」にとらわれた人々との戦いだと印象付けることで、米国民を二分するかのようなレトリックを駆使している。共和、民主両党の相互不信が〝共振〟し、憎悪が増幅されている面があることは否めない。
11月5日の本選まで1カ月半あまり。一部の州ではすでに郵便投票が始まっている。今回の事件を受けて両陣営がどのようなメッセージを発するかが、投票先を決めかねている層の行動を左右する。
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