バイデン氏討論会の「衝撃波」 中露や北朝鮮などが挑発に出る危険も浮上 米専門家
産経ニュース / 2024年7月3日 17時38分
【ワシントン=渡辺浩生】バイデン米大統領が6月27日の討論会で顕著な衰えを露呈したことは、米国外交を指揮する大統領の指導力への対外的な信認の低下を招き、結託を強める中国やロシア、北朝鮮、イランといった現状変更勢力に新たな挑発や干渉の隙を与えかねない、との見方が出ている。
討論会後、本人や家族、陣営幹部は選挙戦の継続を訴え、大口寄付者や民主党支持層に広がる選挙戦撤退論を抑えるのに躍起になっている。
だが、同盟諸国にも不安は広がっている。米国際政治学者のウォルター・ラッセル・ミード氏は1日の米紙ウォールストリート・ジャーナルのコラムで、同盟諸国に「バイデン氏の討論会のパフォーマンスは衝撃波をも送った」と指摘した。
ブリンケン国務長官は1日、米シンクタンクの行事に出演し、「世界中の世論調査をみれば、米国の指導力への信頼度は(現政権発足後の)過去3年半で劇的に向上した」と強調した。今回の討論会を契機に、世界秩序を主導する米国の指導力への不安払拭に努めた形だ。
しかし、ミード氏は「討論はバイデン政権の耐久力と指導力の両方の信任をむしばんでいる」と指摘。大統領は脆(ぜい)弱(じゃく)だとの認識が拡散する最悪のシナリオとして「外国指導者が(軍事力を含む)米国のパワーに挑戦する」ことを挙げた。
ミード氏が先例として挙げたのは、ブッシュ元大統領が2期目末期の2008年、金融危機への対処に追われていたさなかにプーチン露大統領が踏み切ったジョージア侵攻だ。大統領選があった年でもある。
討論会で、バイデン氏はトランプ前大統領から外交・安全保障で追及を受けた。トランプ氏は「われわれは、第三次世界大戦に誰が想像するよりも近づいている。彼(バイデン氏)はわれわれをそこに追い込もうとしている」とたたみかけた。
誇張は否めないが、狙いは、2021年のアフガニスタンからの米軍撤退が招いた混乱、翌22年のロシアのウクライナ侵略の抑止失敗から連想されるバイデン氏の「弱腰」の外交姿勢の危うさを追及することにある。
ミード氏を含む保守系の外交専門家は、現政権下で中露、北朝鮮、イランの現状変更勢力に対する米国の抑止力が低下したことを一貫して問題視してきた。討論会後の米国政治と指導力を巡る未曽有の混乱が抑止力を一段と弱めた可能性がある。プーチン氏、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記ら「悪の枢軸」の指導者が現状変更を狙って「劇的な動きに出る」(ミード氏)リスクは無視できない。
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