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米軍のアフガン撤収から3年 再び問われる決断の是非 深刻な女性迫害、テロ組織は活発化

産経ニュース / 2024年8月30日 12時38分

【ワシントン=渡辺浩生】2021年8月の米軍のアフガニスタン完全撤収から30日で3年となった。多大な犠牲を伴った「米史上最長の戦争」の終結は、イスラム原理主義勢力タリバンによる恐怖支配を許す結果となった。女性が迫害され、テロ組織も活発化。米外交の信頼性に深い傷を残した撤収決断は、大統領選を前にその是非が再び問われている。

指導者が感情的理由で勝利を放棄

バイデン大統領は26日の声明で、約20年に及んだアフガン駐留での米軍の被害は負傷者2万744人、死者2461人に上り、「アフガン人同志とともに、われわれの安全のため全てをささげた」と述べた。

バイデン氏は、副大統領時代に「米軍が永続的なアフガン政府を作り、維持することは不可能」だと確信。大統領就任1年目の21年4月、同年9月までの撤収完了を表明した。米軍トップは当時のガニ政権崩壊を防ぐため2500人の残留を助言したが、バイデン氏は、米中枢同時テロから20年の節目までにアフガン戦争を終結させるという政治的意思を押し通した。

21年5月からの撤収開始で勢いづいたタリバンは、8月15日に首都カブールを制圧。撤収作業中の空港前で米兵13人と住民約170人が殺害される自爆テロを経て同30日深夜、最後の米軍機が離陸した。

「指導者が自らの観念や感情的理由により勝利を放棄した一例」。国際政治学者のウォルター・ラッセル・ミード氏は本紙に語る。米軍撤収に伴う大混乱は米国の指導力の低下を露呈し、ロシアのウクライナ侵略や他の権威主義勢力による挑発を促す契機となった-との指摘は絶えない。

ドーハ合意が政権崩壊の起点に

アフガンの米軍撤収は「米史上最大の屈辱的事件」と批判を強めるのは、米大統領選の共和党候補、トランプ前大統領だ。次期大統領の座を争う民主党候補、ハリス副大統領はバイデン氏の撤収決断を「最後まで見守り、支持した人物」(米CNN)とされるからだ。

だが、米軍撤収はトランプ前政権とタリバンが結んだ20年2月の「ドーハ合意」で盛り込まれたものだ。ドーハ合意は米軍の段階的撤収などを条件にタリバンが和平プロセスに参加するとの内容だが、アフガン政府で駐スリランカ大使を務めたアシュラフ・ハイダリ氏は「アフガン政府は交渉から排除され、政府と軍の士気喪失を招いた」と指摘。合意がガニ政権崩壊の起点となったとの認識を示す。

トランプ氏が撤収判断をハリス氏への批判材料とする限り、自らの説明も求められるだろう。

いずれにせよ置き去りにされたアフガンではタリバンの恐怖政治の下、国民の自由は奪われ、米軍協力者の追跡、女性への「性的アパルトヘイト(差別)」(国連)が増した。少女の小学校以上の教育も禁じられた。

アフガン国内では、国際テロ組織アルカーイダやイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)系勢力「ISホラサン州」の活動が続いている。ドーハ合意でタリバンが約束した「アフガンをテロの温床としない」という約束は形骸化しており、戦闘員を海外でのテロ活動に送り込む事態も懸念される。

米ハドソン研究所のルーク・コフィー上級研究員は「米国土を狙う大規模テロが起きるのは時間の問題」だと述べ、南部国境警備などテロ対策強化を次期政権に求めた。

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