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バングラ情勢、米印や日本が安定化注視 衣料品輸出拠点 強権首相逃亡でユヌス氏トップに

産経ニュース / 2024年8月9日 14時44分

バングラデシュで8日、暫定政権が発足し、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏(84)が政権トップに就任した。同国は世界第2の衣料品輸出国で、多数の工場を持つだけに、米国や隣国インドなどは情勢がどう安定するかに神経をとがらせている。

暫定政権は、総選挙実施で正式政権が発足するまで政府を運営する。ユヌス氏は「無政府状態は敵であり、すぐに打倒されなければならない」と述べ、「不正行為に関与した者は裁きを受ける」と強調した。

ハシナ政権に冷淡だった米は歓迎

米国務省のミラー報道官は8日、暫定政権について「バングラデシュ国民の民主的な未来を描くことを望む」と歓迎した。ミラー氏は5日、「暴力行為、法律違反行為の責任者は当然説明責任があるはずだ」と、ハシナ政権による取り締まりで多数の市民が死亡したことを暗に批判している。

米国はそもそも、ハシナ氏の強権性に批判的だった。今年1月のバングラデシュ総選挙は、野党のバングラデシュ民族主義党(BNP)が「弾圧」に反発してボイコットし、ハシナ氏与党のアワミ連盟(AL)が勝利したが、米国務省は「選挙は自由で公正ではなかった」と断じ、反政権派数千人が逮捕されたことに懸念を表明した。

バイデン政権は昨年の民主主義サミットでは、120もの国と地域に声をかけながらバングラデシュを招かず、民主主義の仲間に入れていない。ハシナ政権崩壊にも冷淡だとみられる。

イスラム過激組織を警戒するインド

隣国の地域大国インドは敏感になっている。モディ政権は5日、空路で国外に脱出したハシナ氏をニューデリー近郊の空軍基地で受け入れ、保護した。

ヒンズー至上主義のモデ首相はハシナ氏と緊密な関係にある。元々、BNPがイスラム原理主義政党と連携し、インドの敵国パキスタンに比較的友好的だったことへの不満があったことに加え、世俗的なアワミ連盟はバングラデシュがパキスタンから独立したときのインドの介入に恩義を感じているという背景がある。

モディ氏は、1月の総選挙も「成功」とたたえた。昨年、20カ国・地域(G20)の議長としてニューデリーで首脳会議を開いた際も、ハシナ氏を南アジアの国から唯一、招待して厚遇し、米国とは対照的な対応を見せた。

モディ氏は8日、バングラデシュについて、X(旧ツイッター)に「通常の状態への早期回復に加え、ヒンズー教徒とあらゆる少数派共同体の安全および保護確保を望む」と投稿した。ヒンズー教徒は既に暴力に遭っており、今後、イスラム過激組織が活発化すれば、インドの治安にも影響しかねないことに懸念を強めているのは確実だ。

一方、親日国のバングラデシュには、約300の日系企業が進出している。両国関係は昨年4月、「戦略的パートナーシップ」に格上げされた。日本は、インド太平洋での中国の軍事的威圧を前に関係強化が必要で、その後、同志国軍の支援枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を適用した。

2016年に首都ダッカでイスラム過激組織が飲食店を襲撃し、人質の日本人7人を殺害したテロでは、ハシナ政権は過激組織を徹底して取り締まり、日本としては対応力を評価しているという側面もある。

ただ、その強権的な手法が今回の抗議デモ発生の素地となり、政権に裏目に出たともいえ、日本としては今後両国関係をどう進めるか、慎重な対応が迫られそうだ。(岩田智雄)

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