ベトナム最高指導者の国葬 後継体制は不透明…米・中露間の等距離外交に変化は
産経ニュース / 2024年7月26日 18時2分
ベトナムの首都ハノイで25~26日、19日に死去した同国の最高指導者、グエン・フー・チョン共産党書記長の国葬が開かれ、各国要人らが参列した。異例の長期政権を率いたチョン氏は反腐敗運動を展開して国民の信望を集めた一方、大規模な粛清が官僚制度のまひや派閥争いの激化を招いた。当面、権力闘争が続くとみられる中、米国や中露と等距離を保つ外交政策が変化するか注視される。
国葬は25日朝に始まり、ハノイの街中に半旗が掲げられた。日本政府の特使である菅義偉前首相のほか、中国共産党序列4位の王滬寧(おう・こねい)人民政治協商会議(政協)主席らが出席し、26日には追悼式典が行われた。ブリンケン米国務長官も葬儀後に訪越の予定で、各国と良好な関係を築いたチョン氏の功績がうかがえる。
2011年に序列1位の書記長に就任したチョン氏は、清廉なイメージで国民の支持を集め、21年には従来の慣例を破り異例の3期目入りを果たした。チョン氏が国を率いた13年間でベトナムはアジア有数の経済成長を成し遂げ、国営メディアは一人当たりの所得が3・6倍に増加したと実績を強調した。
権力闘争は「当面続く」
外交政策では、柔らかくしなる竹になぞらえて各国との関係強化を柔軟に図る「バンブー外交」を展開。15年にはベトナム戦争終結後、最高指導者として初めて訪米するなど対米関係を強化した。一方、ロシアのウクライナ侵略に対しては中立的な姿勢を堅持し、今年6月の訪越でチョン氏と会談したプーチン露大統領は、「バランスの取れた立場を示してくれたベトナムの友人に感謝する」と地元紙に寄稿した。
一方、内政では反汚職運動を進めた。数万人が懲戒処分を受けたほか、「四柱」と呼ばれる権力トップ4に対しても粛清を進め、23年以降だけで国家主席2人と国会議長を解任した。
防衛研究所の庄司智孝地域研究部長は、粛清が引き金となった権力闘争が、暫定書記長に就いたトー・ラム国家主席の指導下でも当面続くと展望する。
後継の書記長人事の行方に関わらず、外交面では全方位外交が続くとの見方が大勢だ。庄司氏は「特に体制が安定するまでの間は、南シナ海などでの摩擦を回避するため、中国に恭順の姿勢を示す傾向を強めるだろう」と分析している。(時吉達也)
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