中国、「テロ対策」名目に締め付け強化 ウルムチ暴動15年「息苦しい状態」とウイグル人
産経ニュース / 2024年7月5日 21時12分
【北京=三塚聖平】中国西部の新疆(しんきょう)ウイグル自治区ウルムチで発生した少数民族ウイグル族の大規模暴動から5日で15年となった。中国当局は「テロ対策」を名目にウイグル族への締め付けを強め、信仰するイスラム教への管理も厳しさを増している。
暴動は2009年7月5日に発生した。南部、広東省の工場でウイグル族が漢族に襲われて死亡した事件への抗議デモがきっかけとなり、一部が暴徒化して漢族や治安部隊と衝突。当局発表で197人が死亡、1700人以上が負傷した。
暴動は、中国当局がウイグル族への抑圧を強化する契機となった。各地の街頭やモスク(イスラム教礼拝所)などに多数の監視カメラを設置し、ウイグル族の動向を徹底的に監視。オーストラリア戦略政策研究所は20年、ウイグル族らを拘束しているとみられる施設が自治区内に380カ所以上あると報告している。
中国政府は今年1月に発表したテロ対策に関する白書で、「テロ活動を計画した犯罪者を法に従って処罰し、テロの大部分を計画段階や行動前に粉砕した」と主張。自治区を「反テロの主戦場」と表現した。
同時に、習近平国家主席が15年に提起した「宗教の中国化」政策の下、中国当局は宗教活動への統制も強めている。自治区などでモスクなど宗教施設を取り壊し、少数民族の脱宗教化を事実上進めていると指摘される。
その一方で、中国政府がアピールするのが自治区の経済振興だ。今年3月には、政府が管轄する国有企業が24年から3年間で、自治区の新興産業などに総額7000億元(約15兆5000億円)近くを投資すると表明した。「アメとムチ」でウイグル族の不満をそらし、漢族社会への同化を図る狙いがある。
◇
事件当時を知る在日ウイグル人は、中国政府が故郷を分断したとして悲痛な思いを語った。
当時、ウルムチの大学で学んでいた関東在住のサメットさん(30代、仮名)は「事件を機に自治区内で相互不信が深まった。他人を信頼しきれない息苦しい状態だ」と嘆く。
事件当日、警官が子供を手でつかみながら空に発砲するのを見た。「当時は中国人として生きていたが、日本に来て中国のひどい仕打ちを知った。中国人との共生は無理だと気づかされた事件だ」と振り返る。
自身も長年帰郷できていない。「農家の父も土地を奪われ、『死んだ方がましだ』と言っていて胸が痛む。国際社会はウイグルを分断した中国に声を上げて」と訴えた。(桑村朋)
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