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国連総会第2758号決議について 欧米に続く日本の侍魂に期待 陳銘俊の一筆両断

産経ニュース / 2024年7月30日 8時40分

陳銘俊氏

中国は長い間、国際連合総会第2758号決議「中華人民共和国政府の代表が国連における中国の唯一の合法的な代表である」という部分を利用して台湾の国際舞台での活動を抑圧してきた。しかし、近年、国際社会は中国の独裁主義拡大の意図と勢力拡大の野心に警鐘を鳴らし始め、ウクライナ戦争の勃発により、台湾海峡の平和と安定に一層の注目が集まっている。

1971年10月25日、第26回国連総会において「中華人民共和国の合法的権利を回復させる」という第2758号決議が採択された。これにより、中華人民共和国は中華民国に代わって国連における「中国」の代表となった。しかし、この決議は「中国の代表権」の問題を扱ったに過ぎず、「台湾」については一言も触れられていない。これまで中国は、自国の利益のためにこの決議を「国際社会が『一つの中国』を支持している」と歪曲(わいきょく)して解釈し、濫用(らんよう)している。

また、国連安全保障理事会の常任理事国としての拒否権を行使し、アジア太平洋経済協力会議(APEC)や五輪などの国際組織に参加する際「中華台北(Chinese Taipei)」という名称の使用、各国に駐在する台湾の行政機構についても国家の意味を持たない名称にするよう、長年各国にプレッシャーをかけ続けてきた。台湾の日本駐在機構が大使館や領事館ではなく「台北駐日経済文化代表処」という名を使用しているのはまさにその例である。一日たりとも中国の統治下に置かれたことのない台湾人は国際社会に参加する際に、本当の名前を使うことができないことに憤りと悲しみを感じていることは言うまでもない。

また世界保健総会(WHA)や国際民間航空機関(ICAO)といった国際組織への参加や台湾が国際競技大会の主催者になることを阻害する元凶となっている。実際、「一つの中国」は中国による「金縛り」であり、台湾海峡の混乱のみならず国際秩序をも危うくし、世界各国と台湾との交流関係の発展を阻み続けている。気候変動や公衆衛生などさまざまな問題に国際社会が力を合わせて対処している中、貴重な専門知識と資源を有している台湾を参加させるため、欧米諸国は台湾の中国に対する抵抗の支援に乗り出している。その第一の課題は「金縛り」を解くことなのである!

近年、米国は5回にわたって中国の同決議の歪曲解釈に深刻な反対を表明。 欧州連合(EU)も昨年末、中国が台湾パスポート保持者の国連やそのイベントへの参加を妨げていることに初めて反対し、中国が国際社会で台湾を圧迫していることに重大な懸念を示した。今年4月29日、米国のシンクタンク、ジャーマン・マーシャル財団は同決議について法的観点から探求するセミナーを開催し、米国のマーク・ランバート国務次官補(東アジア・太平洋担当)代理は反論を発表した。

その反論とは①本件決議は中国の「一つの中国原則」を是認するものではなく、それに準ずるものではないこと②各国と台湾の関係は各国の主権的決定であり、本件とは無関係である③本件は台湾の最終的な政治的地位に関する国連の立場ではない④本件は台湾の国連やその他の国際組織への有意義な参加を妨げるものではない-との4点である。欧米諸国は中国の歪曲解釈に明確に反対し、具体的な行動をもってその誤りに対抗した。これは、中国による台湾海峡の現状の一方的な変更や将来台湾を武力侵攻するための法的根拠構築の阻止、台湾海峡とインド太平洋地域の平和と安定を維持するための努力である。

今年5月24日、日本の林芳正官房長官が「日本はG7ともども台湾のWHA参加を支持する」と示されたことに心からの感謝を伝えたい。しかし、最も重要な国連総会2758号決議について日本政府はいまだ意見を表明していない。台湾は日本の重要かつ必要なパートナーで、さらに歴史のつながりから両国の文化や国民感情で最も親密で信頼できる関係を築き上げてきた。最近では地政学的緊張のため半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本に工場を設立し、日台経済共同体の形成を促している。

このような現状からも「台湾有事は日本有事」は明らかであり、次は日本が欧米に倣って「中華人民共和国が台湾を統治したことは全くなく、台湾は決して中華人民共和国の一部ではない、中国は台湾と各国の交流関係や国際社会への参加などに口を出す権利はどこにもない」という国際的に認知された客観的事実を表明することを期待する。民主主義陣営が一丸となって中国の野心を抑制する他、東アジアおよび世界の平和を守る手段はないのだ。

陳銘俊(ちん・めいしゅん) 1964年3月、台湾東部、花蓮県生まれ。台北市の中国文化大韓国語学科を卒業後、台湾外交部入り。大阪外国語大(現大阪大)や慶応大への留学経験がある。カリフォルニア大学バークレー校、ハーバード大学客員研究員。許世楷・台湾駐日代表(当時)の補佐官や台北駐ボストン経済文化弁事処の副処長などを歴任し2018年7月から日本の内閣官房にあたる台湾総統府で機要室長を務めた。2021年10月から現職。趣味は語学研究。

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