社会不安強まる中国、文革期のようなメディア 九州大院・益尾知佐子教授(中国政治外交)
産経ニュース / 2024年12月13日 20時21分
日本人学校が休校などにしたのは妥当な判断だ。盧溝橋事件の7月7日、柳条湖事件の9月18日、南京事件の12月13日は不測の事態が起きる可能性が高い。中国は「安全」と主張するが、日本が慎重な対応を取らざるを得ない現状は残念だ。
ただ、深圳の事件は歴史教育が直接原因ではなく、混迷する中国社会が背景にあると考える。何より習近平体制に不満を持つ人が増えている。経済の低迷で生活も厳しい中、共産党独裁政権への不満を口にできない人が外国人を腹いせに狙った可能性がある。
新型コロナウイルス禍で、習近平体制はより脆弱になった。庶民の信頼を失った政権は体制を存続させるため、新旧のメディアを動員し、日本を含む先進民主主義諸国をできるだけ悪く、中国をできるだけ素晴らしく宣伝している。客観性に欠けた党礼賛の報道が目立ち、まるで文化大革命のときの雰囲気だ。
一部の中国人は習政権のこうした〝はったり〟に気づいているが、政権が作った西側への対抗的言説に流され、外国人に不満をぶつける人が出ている。中国社会で鋭い緊張が続く限り、深圳事件の温床はなくならない。
自らの非を認めない中国がこの事件で誠意を見せる可能性はない。社会不満のターゲットにされやすい日本としては、中国社会が前向きに変化するまで距離を取るくらいしか、危険を回避するすべがないのかもしれない。(聞き手 桑村朋)
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