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映画「香港、裏切られた約束」日本公開 37歳の亡命監督「香港では声が上げられない」

産経ニュース / 2024年8月30日 17時25分

香港の民主化を訴えるTシャルを手にした顔志昇(トウィンクル・ンアン)監督

香港の民主化運動を記録したドキュメンタリー映画『香港、裏切られた約束』が30日、日本で公開される。映画は中国本土への容疑者引き渡しを可能とする「逃亡犯条例」改正案に反対する2019年の大規模デモに参加した一般市民6人にスポットライトを当てた。監督を務める顔志昇(トウィンクル・ンアン)氏(37)は21年11月以降、香港を脱出し、英国で亡命生活を送る。映画公開に合わせて来日した顔氏は産経新聞のインタビューに「もう香港の人々は声を上げられない。海外にいる自分が映画を発信することに使命感を感じている」と述べ、自由と民主主義を享受できる価値を伝えたいとしている。

映画は東京・吉祥寺の「アップリンク吉祥寺」で、9月6日から京都市の「アップリンク京都」で公開される。在日の民主化団体「香港民主女神(レイディーリバティー香港)」が企画した。

──19年3月に始まった大規模デモにどのように関わったのか

「逃亡犯条例に対する抗議デモを19年6月から撮影した。当時は映画の脚本家だった。ビデオカメラを手に歩くと、何度かデモに遭遇した。なぜ彼ら彼女らは抗議しているのか、興味を持ちカメラを回し始めた。7月に私も警察から催涙弾を撃たれ、考えが変わった。傍観者の立場ではなく、故郷香港のために戦う人々を記録し、世界に伝えなければならないと感じるようになった」

──日本で映画を公開する意義は

「日本はアジアの中で自由と民主主義を享受できる代表的な国だ。その大切さを考えるきっかけになればいい。香港は自由を主張するために、デモや映画に出てくるような過激な手法を取らなくてはならなかったが、日本では、平和的な方法で自由を主張できる。日本の皆さまには政治に無関心にならず、選挙などには参加してほしい。日本の皆さまをうらやましいと思っている」

──ロシアのウクライナ侵略やパレスチナ自治区ガザを巡るイスラエルの戦闘で香港問題への関心が薄まっているようだ

「自由と民主主義が脅かされているという点ではウクライナもガザも同じだ。香港が脚光を浴びるというより、威圧を受ける国や地域がどう連帯して力を合わせていけるかを考えたい」

──英国から香港の現状をどう見るか

「われわれの知っている香港とだいぶ印象が異なる。子供たちは(香港で広く使われていた)広東語ではなく北京語でしゃべり、物価も高騰している。海外メディアは撤退し、信憑性のあるメディアは香港にはない」

──言論の自由を制限する香港国家安全維持法(国安法)が2020年に、今年3月には国安法を補完する国家安全条例がそれぞれ施行された

「今の香港人は思うことを言える機会がない。SNSで感情を吐露するだけでも犯罪とされる恐れがあり、一人で精神的な圧力を抱え込み続けている。数日前、ある大学教授が自死した。『2019年からずっと楽しくない状況が続く。電車と戦車に轢かれるのは状況が変わらない』と遺言を残したらしい。それは香港人に共通する心情だろう」

──顔氏は21年に英国に亡命した

「香港を出ていく者として罪悪感を覚えている。香港ではもう声が発せない。ただ残っている人もいる」

──香港は19年以前の状況に戻れるのか

「あり得ないだろう。自由を享受し、維持するためには自治権を得ないといけない。ただ、今は都市としての香港の将来より、香港に残る香港人、海外に出た香港人が集団として文化を継承されるかに関心を持っている。香港当局はデモ活動について、独立派と外国勢力が結託したなどといっているが、そのような証拠はない。19年当時も独立派はごく少数だ。われわれはただ自由を享受したいといっているだけだ」(聞き手 奥原慎平)

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