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中国「仲介外交」活性化 ミャンマーでも乗り出すも実効性には疑問符

産経ニュース / 2024年9月1日 20時18分

中国が「仲介外交」を積極化させている。7月下旬にパレスチナで対立する各派の代表を北京に招いて和解協議を実施。ロシアのウクライナ侵略を巡っても和平実現に向けた橋渡し役として名乗りを上げた。中東などで米国の存在感が後退している隙を突いて国際的な影響力を強めようとする戦略だが、仲介の効果は疑問視されている。

成果を自賛

7月下旬、イスラム原理主義組織ハマスと、自治政府の主流派ファタハなどパレスチナの計14派が北京に集まり、和解に向けて対話を行った。

最終日には中国の王毅共産党政治局員兼外相が立ち会い、「分裂終結とパレスチナ民族団結の強化に関する北京宣言」に署名。中国外務省によると、各派が「臨時民族和解政府」を樹立することで合意した。王氏は、一連の対話で、①パレスチナ自治区ガザでの停戦の早期実現②パレスチナ人によるパレスチナ統治③パレスチナの国連正式加盟-という「3段階のアプローチ」を進めることを提案した。

昨年3月には中国の仲介でイランとサウジアラビアが外交関係の正常化に合意しており、中国側はそれに続く仲介外交の「成果」と位置づける。中国外務省報道官は「パレスチナの人々に貴重な希望をもたらした」と述べ、仲介外交の成果をアピールした。

ウクライナ案は「国際社会の最大公約数」

中国は続いて、ロシアのウクライナ侵略を巡っても動きを見せた。王氏は7月24日、中国広東省広州でウクライナのクレバ外相と会談し、ロシアとの和平について協議した。王氏は会談で、停戦の実現などに向け「建設的役割を引き続き果たしたい」と表明。ウクライナとロシアの双方が最近、協議を望むシグナルを発しているとして「条件や時機は熟していないが、平和に有益な努力を支持する」と強調した。

中国は5月、ウクライナ危機の政治解決をうたう独自案をブラジルとともに発表し、和平会議の開催などを提案した。王氏はクレバ氏との会談で同案について「国際社会の最大公約数を凝縮している」と主張した。

内戦状態のミャンマーでも仲介外交を続けており、8月には王氏が同国を訪問して軍政トップのミンアウンフライン総司令官と会談した。

「韜光養晦」から「大国外交」へ転換

中国外交は従来、自国との関わりが薄い地域への積極的な関与を控え、巨大経済圏構想「一帯一路」などを通じて経済面での影響力拡大を目指してきた。

そうした方針を修正して仲介外交を積極化させた背景には、習近平国家主席が2022年に提唱した「グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)」がある。「国際・地域で焦点となっている問題の政治解決を後押しする」と掲げる。

主要国と対立せず低姿勢を貫く鄧小平の外交路線「韜光養晦(とうこうようかい)」から「大国外交」へと転換した形だ。日中関係筋は中国の仲介外交について「グローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)への訴求力は過小評価できない」と警戒する。

仲介効果は疑問符

だが、こうした仲介が問題の解決にどれほど寄与するかは疑問が呈されている。パレスチナ各派による北京宣言では、各派間の対立をどう解消するか具体的に示されていない。米誌フォーリン・ポリシー(電子版)は、これまでも各派間の調停が不発に終わっていることを挙げ、北京宣言が分裂終結につながるかは「疑わしい」と指摘する分析記事を掲載。専門家の言葉として、中国は、中東などで米国の存在感が低下していることに乗じ、協議を「外交的信用を高めるために利用している」と断じた。

ミャンマーに関しては、中国外務省が1月に中国の仲介でミャンマー軍事政権と少数民族武装勢力が停戦で合意したと発表したが、その後、戦闘は激化している。

ウクライナを巡る仲介についても、中露関係は緊密で、中国はロシアによる22年の全面侵攻開始以降も表立った対露批判を避けている。西側の政府やメディアは、中国が真の「平和の使者」になれるかは微妙と見ている。(北京 三塚聖平)

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