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「買ったマンションは完成するのか‥」 問題物件の「ババ抜き」状態に陥る中国不動産不況

産経ニュース / 2024年7月15日 21時0分

作業が止まっているというマンション建設現場=7月上旬、中国遼寧省瀋陽市(三塚聖平撮影)

中国国家統計局が15日発表した2024年4~6月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比4・7%増で、市場予測や中国政府の通年目標「5%前後」を下回った。長期化している不動産市場の悪化が足を引っ張っており、中国当局が対策を進めても本格的な反転上昇の兆しが見えない。景気を牽引する工業生産や輸出も欧米との貿易摩擦が先行きに影を落としている。

「未完成物件は買うべきでない」

「自分が購入した物件が本当に完成するか、爛尾楼(ランウェイロウ)になるかずっと心配だった」

中国東北部、遼寧省の省都・瀋陽市の郊外で娘連れの40代女性が話した。女性は2年前にマンションを購入したが、最近ようやく完成して入居できたという。

女性が心配していた「爛尾楼」とは、開発業者が資金繰り難に直面して建設工事が中断したマンションを示す。不動産不況が長期化している中国でここ数年問題となっている。

中国の不動産物件は、竣工(しゅんこう)前に手付金を支払い、住宅ローンの返済が始まることが多い。これにより開発業者は投資資金を確保し、購入者は住宅価格が上がる前に契約を結べるというメリットがあった。

しかし、不動産不況が状況を一変させた。開発業者が資金繰りに行き詰まって建設が中断し、既にローンを支払っているのに住むところがないという人が増えた。瀋陽の女性は「今は未完成の物件は買うべきでない」と指摘する。女性が住むマンションの敷地内にも爛尾楼となっている棟がある。瀋陽市内には販売を始めてから約10年になる今も完成していないというマンションもあった。工事が進んでいない現場で暇そうにしていた警備員の男性は「若者だったら完成して住める可能性があるかもしれないが老人はあきらめるしかない」と苦笑した。

北京の外資企業幹部は「誰が問題物件を引くかという〝ババ抜き〟のような状態になっていて、購入意欲を冷え込ませている」と分析する。

「成約量も成約価格も低い」

中国当局は5月、各地で在庫となっている住宅を地方政府に買い取らせる方針や、住宅ローン金利の下限撤廃などを相次ぎ表明した。市況回復が期待されたが、国家統計局が15日発表した6月の新築住宅価格指数では主要70都市の約91%にあたる64都市で前月と比べて下落した。

瀋陽も下落しており、市内の不動産仲介業者の女性は「成約量も成約価格も低い。政策効果はまだ表れていない」と嘆く。6月の住宅価格指数が上昇した上海市のような住宅需要が元々大きい都市では政策効果が出ているが、瀋陽のような人口の伸びも限定的な地方都市では厳しい状況が続いているもようだ。

不動産不況は、土地使用権の売却収入を主要財源としてきた地方政府の財政状況を悪化させているほか、不動産価格の下落が消費を冷やす逆資産効果による消費不振も指摘される。

「3中総会」の重点は?

現在、景気を引っ張っているのは工業生産や輸出だ。1~6月の工業生産は前年同期比6・0%増で、主要産品の生産量では電気自動車(EV)などからなる新エネルギー車が34・3%増と大きく伸びた。輸出も6月まで3カ月連続で前年実績を上回っているが、欧州連合(EU)が中国製EVに対する追加関税を発動するなど欧米各国が中国の生産・輸出への警戒を増している。

中国共産党は18日まで開催中の重要会議、第20期中央委員会第3回総会(3中総会)で中長期の経済方針について討議している。北京の外交筋は「米国との対立長期化を意識した国内体制の構築に重点を置いている。現在の共産党指導部は短・中期的な景気浮揚を必ずしも最優先していないのではないか」と指摘する。

(遼寧省瀋陽市 三塚聖平)

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