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血の通わない中国の対応 深圳男児刺殺、日本は国際問題化を 神田外語大・興梠一郎教授

産経ニュース / 2024年10月18日 19時50分

神田外語大の興梠一郎教授

中国広東省深圳市の日本人学校に通う男児が中国人の男に刺殺され、18日で1カ月となった。中国情勢に詳しい神田外語大の興梠一郎教授はこの間の中国政府の動きについて「血が通っていない対応だ」と批判し、日本は事件を国際問題化すべきだと訴える。

◇ ◇ ◇

深圳市の男児刺殺事件が起きた直後、中国外務省の報道官は「どこの国でも起こり得る」と発言した。全く人の血が通っていない発言で、普通の感覚ではない。「自分たちのせいではない」と責任回避しているように映る。意に沿わない人物は切り捨てられる習近平政権下で懲罰を恐れ、保身に走る者ばかりになった中国政府が硬直化している表れでもある。

真剣に対応する姿勢見えず

中国側からは1カ月たっても納得のいく説明は皆無だ。日本も引き続き説明を求めるべきだが正直、何も期待できないだろう。6、9月のわずか3カ月間で2回も日本人学校を狙った事件が起きて、いずれも死者が出た深刻な事態だが、中国政府は「偶発的な個別事案だ」との一点張りで、まるで知らん顔だ。

交流サイト(SNS)で「日本人学校はスパイ養成機関」などのデマは放置し、北京大教授による「事件は(中国の)憎しみを生む教育のせいだ」との理性的な投稿は削除する。自らに都合の良い「中国は安全だ」といった明るい情報しか出せないのだろうが、真剣に対応しようという姿勢がまるで見えない。

動機は「生活苦」か「反日」か

容疑者の動機は「生活苦」か「反日」のどちらか、または両方とも要因だったと推測できる。中国は空前の不景気で仕事がない。今年に入り、失業した中年の男が相次いで刺傷事件を起こしている。経済低迷で中国社会の治安が悪化していることと無関係ではない。

反日の影響も捨てきれない。昨年の原発処理水放出以降、日本人学校に卵が投げつけられるなど嫌がらせはすでに起きていた。今年は2件の刺殺事件の前、江蘇省蘇州市で日本人が首を切りつけられる事件もあった。「日本嫌い」が大きな事件を引き起こす〝予兆〟はいくつも出ていた。

中国政府は「反日教育はない」と否定しているが、江沢民時代から反日的な愛国主義教育が強化され、南京大虐殺記念館などの歴史教育施設が作られてきた。容疑者も影響を受けた世代だ。中国は憎しみを生む教育を進めた反省をすべきだ。

中国は事件が世間から忘れ去られるのを望んでいる。「経済悪化による事件増」や「外国人ヘイト」といった切り口で語られるのを避けたいためだ。外国企業の大量撤退につながる事態を恐れている。「個別事案」として静かに終わらせたいのが本音だろう。

日本は国際問題として発信を

一方で中国の不誠実な態度は「日本軽視」ともとれる。二国間関係が悪化して困るのなら事件をぞんざいには扱わないはず。今の中国は経済より上に政治や国家安全がある。敵対する西側の一員である日本を以前ほど戦略的に重要とみていない表れかもしれない。だからといって、何の罪もない在中邦人が危険にさらされるなどあってはならないことだ。

日本は事件を国際問題として世界に発信すべきだ。習近平国家主席が哀悼の意を述べるなどすれば状況も変わるが、可能性はほぼゼロだ。今年は米国人4人が刺される事件も起きたが、米側が説明を求めても動機は明らかにされていない。態度の変化には期待できないが、中国の不誠実な態度を容認してはならない。再発を阻止するため、動機の解明も要求し続けるべきだ。(聞き手 桑村朋)

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