中国の無人探査機が帰還 世界初、月裏側の試料持ち帰りに「成功」
産経ニュース / 2024年6月25日 15時50分
【北京=三塚聖平】中国の無人月面探査機「嫦娥(じょうが)6号」が25日、北部の内モンゴル自治区の予定地域に着陸した。中国国営新華社通信は、世界で初めて月の裏側で土壌などの試料(サンプル)の採取と持ち帰りという任務に「成功した」と伝えた。中国は「宇宙強国」を目標に掲げ、宇宙開発で先行してきた米国の優位を崩そうと国を挙げて取り組んでいる。
中国国営中央テレビは地球への帰還の様子を生中継で伝えた。今後、持ち帰った試料を確認し、月の起源に関する分析などを進める見通し。
嫦娥6号は5月3日に中国南部の海南省から打ち上げられた。6月2日に月の裏側に位置する巨大クレーター「南極エイトケン盆地」に着陸し、4日に月面から離陸して地球に向かっていた。月の裏側には地球から電波が届かないため直接交信ができず、着陸は難度が高いとされてきた。中国は、地球と月の通信を中継する衛星を先に打ち上げて地球との通信環境を整えた。
中国は2019年に世界で初めて月の裏側への着陸を果たし、20年には米国と旧ソ連に次いで3カ国目となる月の表側でのサンプル回収に成功した。30年までに中国人による初の月面着陸を行う計画を立てている。
月探査を巡っては、米国が主導する国際月探査「アルテミス計画」で、日本人の宇宙飛行士を月面着陸させることが決まっている。月面での資源開発の主導権争いも絡んで競争が激しくなっている。
中国の宇宙開発を巡っては米国などが警戒している。軍民が密接に協力しながら宇宙開発を進めており、技術や資源が軍事利用される可能性が指摘されているためだ。ロイター通信によると、米航空宇宙局(NASA)のネルソン長官は6月上旬、嫦娥6号の進展について祝福しつつ、「宇宙活動についてもっとオープンにするように」と求めた。
中国側も国際的な懸念を払拭しようとしているもようだ。嫦娥6号にはフランスやイタリア、パキスタン、欧州宇宙機関(ESA)の観測機器なども積み、宇宙開発における国際協力をアピールしている。
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