ウクライナ軍外国人部隊「自殺的任務」で離脱者増加 疲弊と混乱、台湾人兵士が証言
産経ニュース / 2025年1月4日 10時50分
【台北=西見由章】ロシアによるウクライナ侵略は来月で丸3年を迎える。ウクライナ軍は全領土奪還を掲げ抗戦を続けるが、疲弊と混乱に直面している。外国人義勇兵の部隊「領土防衛国際軍団(ILDU)」に参加した台湾人兵士が産経新聞に実態を証言した。
「ILDUではいま、戦闘経験が豊富なベテラン兵が著しく減り、新兵が非常に多い。自殺的な任務を命じられるなど危険性が高まり、ベテラン兵の離脱者が増えているからだ」
昨年、ウクライナ東部ドネツク州バフムト周辺での戦闘などに参加した台湾人兵士によると、ILDUはウクライナ軍の中でも突出して死傷率が高い。その原因の一つは人員不足で「新兵が新兵を率いる状況」になっていることだ。複数の言語が話せることを理由に、軍務経験がわずか2週間の兵士を小隊長に任命したこともあったという。
戦闘で負傷した兵士が救出されないまま戦場に取り残され死亡するケースも目立つ。戦力に余裕がないためだ。作戦のリスク評価は行われず「想定外の事態が起きた場合の『プランBやC』がなく、運任せの側面が強かった」と指摘した。
ILDUの死傷率が高い背景には、ウクライナ軍上層部から戦力として重視されず「消耗品のように扱われている」実態もある。
装備の不足は深刻だ。部隊の規模が小さいため重火器や戦車、装甲車などは与えられず、民間車両を使用していた。作戦任務はいずれも小規模の分隊で行われ、待ち伏せに遭うなどして全滅するケースも多い。
ウクライナ政府は外国人の軍志願者を約2万人と公表したが、この台湾人兵士は「プロパガンダだ。全部隊の外国人を合わせても数千人だろう」と指摘した。
外国人義勇兵の志願理由はさまざまだ。欧米出身者は「ウクライナの自由を守りたい」という純粋な思いのほか、戦闘経験を積むことが目的の兵士もいた。中南米出身者は給与に魅力を感じたケースが多い。外国人兵士は毎月の基本給が2万フリブナ(約7万2000円)で、戦闘への参加状況などに応じて月3万~10万フリブナが日割りで加算されるという。
ILDUによると昨年5月以降、ウクライナ軍と契約した外国人は少なくとも6カ月間軍務に就くことが法的に義務付けられた。この台湾人兵士は軍側から「6カ月以内に任務を拒否して軍を離れた場合、強制的に憲兵に送致される」などと伝えられた。しかしウクライナの弁護士と契約書を精査した結果、6カ月の軍務は道徳上の義務に過ぎず法的な強制力はないことが分かったという。
「ILDUが直面している問題をウクライナ軍上層部は改善してほしい」。台湾人兵士は取材に応じた理由をそう語った。
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