「鋼鉄の長城を強固に」 中国「反スパイ法」施行1年、スマホ検査可能の新規定も
産経ニュース / 2024年7月1日 20時1分
【北京=三塚聖平】中国でスパイ取り締まりを強化する改正反スパイ法が施行されてから1日で1年となった。中国当局は国民に協力を呼び掛けて摘発を進めており、同日から個人のスマートフォンやパソコンを検査する権限を当局者に与えることを明確化した新規定も施行。海外で高まる懸念には「中傷」などと反発している。
通信アプリ上で成果強調
「国家安全を守る鋼鉄の長城をより強固なものにした」
中国でスパイ摘発を担う国家安全省は1日、中国の通信アプリ、微信(ウィーチャット)の公式アカウントで昨年7月1日施行の改正反スパイ法の成果を強調した。
公式アカウントは昨年7月末に開設。「防諜には社会全体の動員が必要だ」などと国民に協力を求めてきた。今年6月上旬には英秘密情報局(MI6)のスパイとして中国の中央政府機関の職員2人を摘発したと発表。また、昨年3月に北京で拘束されたアステラス製薬の日本人男性社員について、中国当局は起訴の可否を判断する審査に入っている。
日中交流に携わる日本人は「中国側は『問題行為をしなければ大丈夫だ』というが、何が問題か分からないため不安を抱える外国人は多く、中国との交流の障害になっている」と指摘する。
「国家安全」の範囲拡大
中国政府は「国家安全」を優先させる姿勢を強めている。最近も地理や気象といった生態環境に関するデータの収集や中国経済への批判的な言論も摘発する可能性を示唆。「国家安全」の範囲が拡大し続けている。
中国は今月1日、国家安全を脅かす行為に対する法執行の手続きを記した新規定を施行した。新規定によると、個人や組織が所有する電子機器について「緊急事態下」では手続きを簡略化。責任者の承認を得た上で警察証などを示せば、その場で検査ができると定めた。何が緊急事態に当たるかは明示されておらず、改正反スパイ法と同様に恣意的な運用が懸念される。台湾で対中政策を主管する大陸委員会は「内容や文章があいまいなため誤って法令に触れるリスクが増す」と注意を促す。
中国入国時にスマートフォンが検査されるといった懸念が浮上しているが、国家安全省は公式アカウントで「一部の海外反中敵対勢力がデマを飛ばして中傷している」と反発している。
5月1日にも国家機密に関して中国共産党の指導と関連部門の権限を強化する改正国家秘密保護法も施行しており、国家安全優先の方針を緩める気配は一切ない。
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