中国漁船死亡事故で中台が「手打ち」合意 緊張緩和へ中国側譲歩も
産経ニュース / 2024年7月30日 17時37分
【台北=西見由章】台湾が実効支配する中国大陸沿岸の金門島沖で台湾当局が追跡していた中国漁船が転覆し2人が死亡した事故を巡り、中台の代表は30日、解決に向けた協議を行い合意した。事故後、5カ月以上にわたって双方の主張が対立していたが、11月の米大統領選を前に緊張関係を緩和したい中国側が譲歩した側面もありそうだ。
金門での協議終了後、台湾の海巡署(海上保安庁に相当)の謝慶欽副署長は記者団に合意を明らかにする一方、「詳細は公表できない」とした。台湾メディアによると、死者1人あたり約600万台湾元(約2800万円相当)の見舞金を遺族に支払う。金門で保管されていた2人の遺体は30日、中国側に返された。
事故は2月14日、中国船が許可なく進入するのを禁じた金門島周辺の「禁止水域」で海巡署の巡視艇が中国の小型船を発見、追跡中に船が転覆して4人が海に落ち、2人が死亡した。小型船は船名や船籍登録書、所属する港がない「三無船」と呼ばれる船だった。
中国側は謝罪と責任者の追及、賠償金の支払いを要求したが台湾側は拒否。中国は台湾が設定する「禁止水域」と「制限水域」について、管轄権を黙認していた従来の姿勢を一変させ、公船による進入とパトロールを常態化させていた。
台湾側は対中関係の安定を喫緊の課題としているが、台北の政治学者は中国の動向について「米大統領選でトランプ前大統領が当選する可能性も見越し、対中圧力が強まるのを避けるために台湾など東アジアでの緊張を緩和しようとしている」と分析。台湾の民主進歩党政権を相手にしない立場は変わらないが、「経済が不調の中、台湾の投資を呼び戻したい思惑もある」と推察した。
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