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香港で加速する中国式愛国教育 小学校でも強化「中国は台湾なの?」児童の質問に戸惑う教師

産経ニュース / 2024年12月17日 15時0分

香港の博物館で「日本軍の香港侵略」について学習する中学生たち=11月、香港抗戦・海防博物館

中国の習近平政権の指導下、香港で「教育の中国化」が加速している。来年度から小学校で「人文科」がスタートし、中国式愛国教育が本格化する。現在、準備を進める教育現場では戸惑いと警戒の声が上がっていた。

香港政府の教育局は、来年9月の新年度から始まる人文科について「国家の愛国主義教育と歩調を合わせ、本土と香港の緊密な関係を強調し、国民・中華民族の意識を高め、愛国心を培う」ことなどを原則と定める。

必須の学習内容は「国旗掲揚、国歌斉唱のマナー」「中華民族の起源」「国家の安全」「今日の社会に重要な影響を与えた歴史的事件」など。歴史的事件としては1840年に起きたアヘン戦争、1911年の辛亥革命に加え、30~40年代の「抗日戦争」が特記されている。

現在、教育現場では人文科導入に向けた準備が進むが、香港の小学校教師(29)は産経新聞の取材に「どう教えたらいいのか。ビクビクしている」と心境を明かす。

同僚の教師が「清朝を倒した孫文の革命が現在の中華人民共和国につながった」と教えたところ、児童から「中国は台湾なのですか?」と質問され面食らったという。

授業で取り上げた孫文の革命軍の旗「青天白日旗」が、台湾の旗「青天白日満地紅旗」に似ていたため、孫文がまず台湾をつくり現在の中国に広がっていった、つまり中国は台湾の一部と考えたようだった。

「子供は真面目に聞いてくる。困った同僚は『後で先生に聞きに来てね』と答えたそうです」

答え方によっては、保護者が学校に連絡したり当局に密告したりして問題化し、教師の資格を剝奪されかねない。

教科書以外の「歴史的事件」、たとえば、中国で敏感な89年の天安門事件や、香港で2019年に続発した反香港政府・反中国共産党デモについて児童から質問されたらどう答えたらいいのか。取材した小学校教師は戸惑いを隠さない。

「私が学んだ歴史と違う歴史を教えなければならなくなったとき、良心の呵責(かしゃく)に苦しむと思う」

小学校教師を対象にした人文科の研修でも、講師を務める元教師から「時代は変わったのです。テストは児童が自由に答えられる形式ではなく、選択式にしなさい」「まずは自分を守ることを考えなさい」と指導されているという。(藤本欣也、写真も)

教育の中国化

香港政府は、2020年6月の香港国家安全維持法(国安法)の施行によって反政府デモを押さえ込むと、愛国教育を基本とする「教育の中国化」に着手した。中学(日本の中学・高校に相当)で教えられていた、社会問題をテーマに生徒の考える力を伸ばす「通識科」が「批判的思考を育み、デモにつながった」と判断。21年から廃止し、中国国民としての意識を高める「公民と社会発展科」に変わった。

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