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ドイツ「不法移民は追放」動議可決 最大保守野党、「極右」連携 メルケル氏が異例の批判

産経ニュース / 2025年1月31日 9時17分

【パリ=三井美奈】ドイツ連邦議会は1月28日、すべての不法移民を「国境で追い返せ」と求める動議を採択した。2月の総選挙を前に、保守系最大野党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が提出。政界で極右扱いされる「ドイツのための選択肢」(AfD)の支持を得て可決させた。「タブー破り」の右派連携に左派は反発し、CDUのメルケル元首相も異例の批判声明を出した。

CDUのメレツ党首は動議提出にあたり、「外国人、特に難民申請者の犯罪は深刻な問題だ。欧州連合(EU)は機能不全の状態にある」と発言。EUルールより、ドイツの安全確保を優先すべきだと訴えた。

EUは国際条約に沿って、「難民申請しようとする移民を追い返してはならない」という原則をとる。だが、動議は国内の治安にかかわる場合、例外が認められると正当化している。

ドイツでは22日、南部アシャッフェンブルクで難民資格を得られなかったアフガニスタン人の男が、刃物で2人を刺殺する事件が起きたばかり。メルツ党首は中道左派、社会民主党(SPD)のショルツ首相の移民政策を「生ぬるい」と批判しており、強硬な動議で違いを示そうとした。CDU・CSUは現在、支持率30%で首位に立ち、メルツ氏は次期首相の最有力候補とみなされている。

AfDは移民排斥を訴え、SPD、CDUなど主要政党は連携を拒否してきた。今回の動議に拘束力はないが、連邦議会の決議でAfDが多数派に加わったのは初めて。「包囲網」崩壊への危機感が広がる。

ショルツ首相は、動議提出を「許しがたい行為」と批判。CDU内でも賛否は分かれ、メルケル元首相は声明で、AfDを多数派に引き込むのは「よくない」と明記した。AfDは「ドイツにとって歴史的な日」と動議成立を歓迎した。

公共放送ARDによると、ベルリンのCDU本部前では30日、約6千人が抗議デモを行った。一方、世論調査では、動議に記されたように、不法移民の入国阻止を支持する意見が6割にのぼっている。

ドイツはメルケル政権時代の2015年、シリア内戦で難民が欧州に押し寄せた際、「寛容な受け入れ」を主導。移民問題では常に、EUの連携を訴えてきた。だが、移民による犯罪が相次ぎ、世論は変わりつつある。昨年8月には、西部ゾーリンゲンでシリア人の難民申請者が3人を刺殺。12月には東部マグデブルクのクリスマス市にサウジアラビア人の男が車で突っ込み、6人を死なせた。

2月の総選挙では、CDU・CSUは単独で連邦議会の過半数議席を得られず、SPDか緑の党との連立政権を目指すと予想されている。今回の動議採択で保革の溝は深まり、連立交渉の行方に不安を残した。AfDの支持率は現在20%。SPDや緑の党を押さえ、2位となっている。

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