英労働党政権、EUとインド太平洋重視の「両輪外交」へ 対中政策に不安も
産経ニュース / 2024年7月5日 17時42分
【ロンドン=黒瀬悦成】4日の英総選挙で政権を奪還した労働党のスターマー新首相は、懸案の経済立て直しを視野に、2021年に完全離脱した欧州連合(EU)との関係強化を図る。同時に、スナク前首相の保守党政権下で進められたインド太平洋重視の政策も継承し、外交の両輪としたい考えだ。
保守党政権下のEU離脱を巡っては、調査会社ユーガブの世論調査(23年12月実施)で「間違いだった」との回答が55%に上り、失敗だったとの評価が定着しつつある。
英国にとりEUは最大の貿易相手だが、離脱後は関税や複雑な通関手続きが復活し、貿易や投資、物価に悪影響を及ぼしている。スナク前政権は代わりにインド太平洋重視の政策に活路を見いだそうとしたが、EU離脱の経済的損失を埋めるに至らなかった。
労働党はEU再加盟を否定する一方、EUとの間で国境での通関や検査の簡略化を進めるとしている。不法移民対策でもEUとの連携を強化し、ロシアの脅威をにらんだEUとの新たな安全保障協定の締結も目指す。
スターマー氏は今月18日に英国で開かれる欧州政治共同体首脳会議で政権の欧州政策を直接説明する。9日に米国で始まる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議では、ロシアに侵略されるウクライナへの支援で結束を訴え、英国が今後も欧州側の支援を主導する考えを表明する見通しだ。
インド太平洋政策では、スナク前政権同様に対日関係や米豪との安全保障枠組み「オーカス(AUKUS)」を重視。インドとも新たな自由貿易協定の締結を含む戦略的関係の深化を図る。
一方、対中国政策では「可能な分野で協力し、必要な場合は競争し、対決すべきときは対決する」とするが、具体像は明確でない。総選挙が想定より早く行われ、政策策定が遅れているとされる。新政権は各省庁から中国絡みの懸案を早急に聞き取り、政権発足100日以内に対中戦略の概略を発表したい考えだ。
EUは4日、中国製電気自動車(EV)への追加関税の発動を発表し、米国とカナダも追随の動きを見せる。これに同調するかどうかが対中政策の方向性を決める試金石の一つとなりそうだ。
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