ドイツ、16歳投票で初の全国選挙 「若者は左派」は幻想だった? 緑の党に大逆風
産経ニュース / 2024年6月21日 11時5分
ドイツで9日行われた欧州議会選は、選挙権年齢を18歳から16歳に引き下げて行う初の全国選挙になった。ショルツ政権第2与党の中道左派「緑の党」は支持基盤だった若者の集票拡大を期待したが、若者票は右派に流出。同党の選挙惨敗を後押ししたことが明らかになり、衝撃が広がった。
今回の選挙で、緑の党の得票率は12%。環境ブームが追い風になった19年の前回(21%)から後退し、第4党に沈んだ。調査の結果、若者の「逆風」の勢いは中高年層より強かったことが分かった。25歳未満の得票率は11%。2019年の前回選挙(34%)から大きく下落した。
選挙年齢引き下げは、緑の党の看板政策のひとつだった。制度改正を主導した同党のパウス家族・高齢者・女性・青少年相は「私たちは若者の信頼を失った」と題したドイツ紙への寄稿で、結果を嘆いた。
極右は躍進
今回の選挙では緑の党に代わり、移民排斥を訴える極右「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持を急伸させた。25歳未満の16%を得票し、19年の前回(5%)から11ポイント上積みした。最大野党の中道右派「キリスト教民主同盟(CDU)」は5ポイント増の17%で首位に立ち、右傾化が鮮明になった。
ベルリン自由大学のトルステン・ファース教授は産経新聞の取材で、「若者の投票行動は中高年より柔軟。目前の課題に応じて投票政党を決める。『伝統政党は安定している』『前回も入れた政党だから』などの思い込みがない」と分析した。19年の前回選挙では環境政策が重視され、今回は経済不安や移民問題に関心が移った点で、中高年と投票行動がほぼ同じだったとも述べた。
緑の党は、1970年代に西ドイツ(当時)で若者たちに広がった非核平和運動が原点。19年の選挙での躍進の背景には、スウェーデンの高校生だった環境活動家、グレタ・トゥンベリさんに共鳴する若者デモの広がりがあった。21年に政権参加し、環境政策のほか、LGBTなど性的少数者の権利保護、有機農業の推進を進めた。
18年の調査では、英独仏など西欧主要国では30歳未満の3~4割が「左派を自認する」と回答し、中高年を大きく上回った。近年は、ドイツのほか各国で移民制限を求める右派や極右が若者の支持を伸ばしている。
ドイツでは州レベルで選挙年齢を16歳に引き下げる動きが進む。国政選挙での制度変更は、基本法(憲法に相当)改正が必要になる。欧州議会選ではドイツとベルギー、オーストリア、マルタが16歳以上、ギリシャが17歳以上に投票を認めている。(三井美奈)
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