G7不安な年越し カナダは首相退陣の危機、欧州も大揺れ 盤石はトランプ米政権だけ?
産経ニュース / 2024年12月26日 10時7分
【パリ=三井美奈】先進7カ国(G7)は今年、欧州、カナダで各国政権が弱体化し、不安な年越しを迎えることになった。ウクライナ支援や対中包囲網で、民主主義圏の司令塔を担ったG7は試練の時を迎えた。来年1月に発足するトランプ次期政権が各国の中道左派与党を揺さぶり、不安に追い打ちをかけている。
隣国襲った旋風
2025年にG7議長国となるカナダでは、トルドー首相が退陣の危機に直面する。
トルドー氏は中道左派で在任9年。少数与党による政権運営が続き、支持率が急落するさなか、「トランプ旋風」に見舞われた。11月、「カナダが不法移民対策をとらない場合、カナダからの輸入品に25%の関税を課す」と宣告された。
トルドー氏の煮え切らない対応を不満として今月、財務相が辞任。野党は不信任案提出の構えを見せる。来春にも総選挙が前倒し実施される可能性がある。
トルドー氏は18年、カナダが議長国となったG7首脳会議で、トランプ氏と大モメした因縁がある。この時、トランプ氏は貿易をめぐる共同声明に反発し、トルドー氏を「不誠実で弱虫」とののしった。
仏も少数内閣続く
フランスではマクロン大統領の指導力低下が止まらない。バイル首相の少数内閣は23日の発足早々、「不信任決議を回避できるのか」と不安視されている。
フランスは財政赤字が欧州連合(EU)の基準を違反し、財政再建が急務の課題。バルニエ前首相は緊縮型の25年予算案を下院で強行採決し、左右両派の野党から不信任決議を突き付けられた。バイル氏は、中道野党から支持を引き出して新たな予算案を2月に成立させたい構えだが、政局の壁は「ヒマラヤ(山脈)のように高い」と認めた。
下院は極右「国民連合」が最大野党。マクロン政権は脆弱な少数内閣が続き、バイル氏は今年4人目の首相だ。混乱が続けば、「大統領の辞任もありうる」との観測が広がる。
ドイツ政権交代難航も
フランスとともにEUを牽引するドイツは、来年2月に総選挙が控える。ショルツ首相の中道左派、社会民主党(SPD)は支持率が14%に落ち込み、政権交代が確実視される。
現在、保守系野党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が支持率33%で首位に立ち、総選挙では第一党となる見通し。移民排斥を掲げる右派「ドイツのための選択肢」(AfD)が2割近くを得票し、第2勢力となる可能性が強い。CDUのメルツ党首はAfDとの連携を拒否しており、連立交渉は難航が予想される。ドイツ経済の低迷も陰を落とす。
英伊はまずまず安定
独仏と比べ、英国とイタリアは安定している。英労働党のスターマー首相は7月の就任後、増税を発表。トランプ氏側近の米実業家マスク氏に「スターリン」と揶揄(やゆ)されながらも、財政再建を進める。イタリアのメローニ政権は、看板の不法移民対策が「EU人権法に抵触の恐れあり」という司法判断に阻まれたものの、連立与党の乱れはない。
米国はトランプ次期大統領の与党、共和党が上下両院で過半数を占める。G7で最も安定した政権となりそうだ。
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