自民総裁選「選択的夫婦別姓より、話すべきことあるはず」 仏紙東京特派員アルノー氏
産経ニュース / 2024年9月18日 11時4分
自民党総裁選を知日派の外国人はどう見ているのかー。フランスの主要紙フィガロの東京特派員、レギス・アルノー氏が産経新聞のインタビューに応じ、「日本にとって真に重要な問題が議論されていないことに驚く」と候補者討論に疑問を呈した。
――総裁選をどうみる
「いまの日本が直面する重要問題が全く討議されていないと感じる。人口減少に伴い、移民受け入れはどうするのか。秋になっても連日、気温が30度を超える異常気象が続き、エネルギー計画も喫緊の課題となっている。国民はスーパーで主食のコメが買えずにいるというのに、どうしたことか」
「候補者討論では『選択的夫婦別姓』が議題になった。しかし、誰も戸籍制度をなくすとは言わない。小手先の改革なら、ほかに話すことがあるだろう。衣料品店『ユニクロ』を展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が『このままでは日本人は滅びる』というほど、国を取り巻く環境は深刻だ」
変わり映えしない政治…「以前は違った」
――自民党政治については
「総裁選は『次の首相』を選ぶ重要な選挙だが、国民は投票できず、まるで水族館の水槽を眺めているように見える。パリの編集部に記事を売り込んだら、『結果を書けばよい』と言われた。変わり映えのしない自民党政治に対し、フランスで関心は極めて薄い」
「自民党も以前は違った。2000年代、小泉純一郎首相(当時)は『自民党をぶっ壊す』と言い、公約の郵政改革を進めて国民の支持を集めた。皇室改革論議も始まり、二階俊博幹事長(同)は女性天皇の容認に踏み込んだ。現在、小泉進次郎元環境相は党内リベラル派といわれるが、皇位継承のあり方をめぐって明確な発言を避ける。ほかの候補も同じだ。批判されるのが怖いのだろうか。野党は政権奪回の兆しすら見えず、現状ではNGO(非政府組織)と変わらない」
――日本の現状をどうみる
「新型コロナウイルス流行後、非常に保守的になったと感じる。内向きになったということだ。コロナ対策で日本は欧州のように都市封鎖をせず、みんなが行動を自制することで乗り切った。結束の強さは安全な社会を作る一方、異論を嫌う性格を強めた。民主主義国家なのに、環境保護や女性の権利を声高に訴えると、社会で孤立を強いられる。移民については門戸を閉ざしたままで、姿勢はフランスの極右に近い」(聞き手 三井美奈)
レギス・アルノー氏 仏紙フィガロ東京特派員。日仏2カ国語ビジネス誌「フランス・ジャポン・エコー」編集長。著作は「誰も知らないカルロス・ゴーンの真実」(2020年、共著)など。
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