ウクライナ避難民 ポーランドの力に 大阪報道本部・黒川信雄 記者発
産経ニュース / 2024年10月13日 8時0分
9月下旬に東欧・ポーランドに出張する機会があった。2025年大阪・関西万博に関連した取材だったが、同時に強い関心があったのはウクライナと国境を接するポーランド国内の現状だった。
2022年2月にロシアがウクライナに全面攻撃をかけた直後、数百万人の避難民がポーランドに押し寄せ、現在も100万人近い人が同国内にとどまっているとされる。ロシアによる侵略が開始されてから、間もなく1千日を迎える。支援疲れで、ポーランド国内の経済が疲弊しているのではないかとの疑念が尽きなかった。
しかし結論から言えば、そのような懸念は杞憂(きゆう)だった。ウクライナからの避難民への公的支援は当然、財政面への負担になっているが、一方で彼らは労働力不足が指摘されるポーランド経済において貴重な力となっていた。ポーランドは、空路がふさがれているウクライナに入国する際の、欧州連合(EU)側からの主要交通路を提供しており、戦争終結後の復興需要を視野に入れているとみられる国際的な企業進出も相次いでいた。
記者は戦争開始から約半年後の22年10月に、ポーランド経由でウクライナに渡った。ワルシャワから鉄道でキーウに向かう際の、ポーランド側の通過駅に「ルブリン」という駅があった。ウクライナ国境から約100キロの距離にある。今回の出張ではそのルブリンの街中を訪問できたが、美しい旧市街には観光客が多く訪れていた。市内は強い活気が感じられ、地元経済界は日本企業の誘致にも積極的だった。戦争が続く国の国境に近い街という印象からは、ほど遠かった。
ポーランドではEU加盟後、多くの若者が仕事を求めて他のEU諸国に渡る事象が続いてきた。英国のある都市で、ポーランドからの移民流入に反発する市民の様子を取材したことがあるが、そのような状況が国内の労働力不足につながっている。ポーランドがむしろ懸念するのは、ウクライナからの避難民が帰国し、再び労働力不足に陥る事態だという。
近隣国で紛争の懸念が高まるのは、日本も同じといえる。ポーランドの取り組みに、日本はさらに注目すべきだ。
◇
黒川信雄
平成13年日本工業新聞社入社。産経新聞経済本部、外信部を経て26年11月からモスクワ特派員を務めた。30年1月から大阪本社経済部(現・報道本部)。
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