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ロシアで特殊詐欺被害が激増 焦るプーチン政権「ウクライナが犯人」説流布

産経ニュース / 2025年1月26日 13時0分

虚偽の電話などで金銭をだまし取る特殊詐欺の被害がロシアで激増し、社会問題化している。ウクライナ侵略後、「露社会は団結した」と繰り返してきたプーチン露大統領にとり、詐欺の横行は露社会で犯罪が跋扈(ばっこ)していることを示す都合の悪い事態だ。政権は犯行の巧妙化に追い付けておらず、「主な犯人はウクライナだ」と宣伝し、国民の不満をそらそうとしている。

「被害額がけた外れ」 国民の9割が過去1年間に詐欺に遭遇

露主要メディアが伝えた露中央銀の統計によると、ウクライナに全面侵攻した2022年、ロシアでの特殊詐欺の被害額は141億6000万ルーブル(約223億円)だったが、23年は158億ルーブル(約249億円)に増加。24年は1~9月だけで179億ルーブル(283億円)に上り、早くも前年を上回った。

23年に実施された世論調査では「過去1年間に詐欺の試みに遭遇した」と回答した露国民は91%に上り、22年の82%から9ポイント上昇した。また、「主な心配事の要因」に「詐欺」を挙げる国民が24年に急増したことも世論調査から明らかになっており、ロシアで詐欺行為が活発化していることが示唆された。

こうした中、プーチン氏も昨年12月の年末記者会見で特殊詐欺の横行に言及。「被害額がけた外れだ」と述べ、危機感をあらわにした。プーチン氏は「聞きなれない声や不審な提案を行う電話を受けた場合は通話をすぐやめるべきだ。全ての国民にそうしてほしい」とも訴えた。

架空の軍需関連基金に投資募る…「戦時下」ならではの手口も

露政権側は特殊詐欺への対策を強化している。

昨年7月、詐欺被害を減らすための法律を施行。銀行は顧客から送金依頼を受けた際、受取人口座をデータベースで照会し、過去に詐欺行為に関与した疑いがあった場合は送金を保留するよう定められた。

12月には、特殊詐欺の温床になっているとの理由で、インターネット回線を利用するIP電話から固定電話や携帯電話への電話を禁止した。詐欺の疑いのある電話の発信を自動でブロックするシステムも稼働させている。

ただ、詐欺師側の手口も巧妙化している。古典的なオレオレ詐欺や懸賞当選詐欺、複数人で「警察官」や「銀行員」などの役割を分担して相手をだますことなどは序の口で、交流サイト(SNS)で個人情報を調べた上で相手を信用させる手口や、AI(人工知能)を使って虚偽の音声や映像を作成する技術「ディープフェイク」を使う手法なども確認されているという。

さらに「愛国行為になる上、年利90%のリターンを得られる」とうたって架空の軍需関連基金への投資を勧めたり、捜査当局者を装って「あなたの口座からウクライナへの違法送金が確認された。刑事訴追を避けるためには金銭の支払いが必要だ」などと脅したりといった「戦時下ならでは」の手口も確認されている。

ロシアでは出所不明なSIMカードなども比較的容易に手に入るとされ、政権側と詐欺師側による「いたちごっこ」が今後も続く見通しだ。詐欺の横行は当面、収束しそうにない。

ロシア人を標的とする「詐欺コールセンター」設置と主張

こうした状況下で、政権側は「多くの詐欺を行っているのはウクライナだ」とする見方を流布し、詐欺の多発に不安を募らせる国民をなだめようとする。

露銀行最大手ズベルバンクのクズネツォフ副頭取は昨年9月、国営テレビ番組で「詐取された金銭の少なくとも40%がウクライナ軍の資金になっている」と主張。国営ロシア新聞(電子版)も7月、ウクライナが首都キーウ(キエフ)などにロシア人を狙う「詐欺コールセンター」を設置し、従業員に日本円で月給約15万円と、詐取金の一部をボーナスとして支払っているとする記事を掲載した。

プーチン氏も年末会見で「ウクライナの情報機関が『国策』として詐欺を行っている」と発言した。

さらに、インタファクス通信によると、露内務省は昨年12月、18~26日に露各地で行政庁舎への放火や警察車両の爆破などを狙った事件が計55件起き、容疑者として計44人を拘束したと発表した。

内務省はその上で、「捜査の結果、一部の容疑者が、ウクライナの情報機関に金銭を詐取され、『犯行を実行すれば金銭を返す』と教唆されていたことが判明した」と主張。他の容疑者についても、ウクライナ側から犯行の見返りに金銭の供与などを約束されていたと主張した。(小野田雄一)

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