ジョージア、反LGBT法案を可決 進む反リベラル化 EU入りに暗雲
産経ニュース / 2024年9月18日 8時38分
欧州連合(EU)加盟を目指す南カフカス地方の旧ソ連構成国ジョージア(グルジア)の議会は17日、性的少数者(LGBTなど)の権利を制限する反LGBT法案を可決した。現地メディアが伝えた。EUは昨年12月に「加盟候補国」の地位を与えたジョージアの反リベラル化を懸念し、法案を廃案にするよう求めていた。ジョージアとEUの関係悪化は確実で、同国のEU入りの先行きには不透明感が増す見通しだ。
現地メディアによると、法案は伝統的家族観と未成年者の保護を名目とし、同性婚の禁止▽性的少数者による養子受け入れの禁止▽性別適合手術の禁止▽メディアなどでのLGBTの宣伝の禁止-などを定め、違反すれば罰則を科すとする内容。同国のコバヒゼ政権の与党「ジョージアの夢」が議会に提出していた。
法案は今後、署名のためズラビシビリ大統領に送付される。同氏が署名を拒否した場合でも、議会が拒否権発動を無効だと議決すれば、法案は成立する。
政権側が法案を可決した狙いは、今年10月に行われる議会選を見据えて保守層の支持を拡大することだとする観測が強い。
実際、政権側は6月、大規模な抗議デモが相次いだにもかかわらず、外国から資金提供を受けて活動する団体を規制する「反スパイ法」を成立させた。これも議会選に先立って政権側に批判的なNGO(非政府組織)などの弱体化を狙ったものだとみられている。
反LGBT法と反スパイ法を巡っては、類似の法律が施行されているロシアで言論統制の手段として使われてきたことから、ジョージア国内では言論の自由が悪化しかねないとの不満が強い。EUが批判してきた両法の制定により、ジョージア国民はEU加盟が遠のく事態も懸念している。このため、両法の制定で政権支持率がかえって低下する可能性も指摘されている。
反スパイ法に続く反LGBT法の可決で、ジョージアとEUとのさらなる関係悪化は不可避だ。反スパイ法の制定に際し、EUはジョージアの加盟手続きの一時停止を発表し、同国への3千万ユーロ(約47億円)の財政支援も凍結した。
米国もジョージアの反リベラル化を批判し、同国政府高官や与党議員ら数十人にビザ(査証)発給を制限する制裁を科したほか、9500万ドル(約135億円)超の財政支援を停止した。(小野田雄一)
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