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「日本も侍精神を忘れるな」 露との戦いに身投じたウクライナの映画監督センツォフ氏

産経ニュース / 2024年8月23日 18時14分

ウクライナ領土防衛隊の志願兵として最前線で露軍兵士と戦うオレグ・ゼンツォフ氏(黒瀬悦成撮影)

ロシアに侵略されたウクライナに、志願兵として露軍との戦いの最前線に身を投じた映画監督がいる。オレグ・センツォフ氏(48)。今年6月には戦地で偶然撮影していたビデオ映像をドキュメンタリー作品として公開した。特別休暇で首都キーウ(キエフ)を訪れた同氏は産経新聞とのインタビューに応じ、中露やロシア、北朝鮮の脅威に直面する日本も「国家存亡の危機に際しては、かつての侍の精神を思い出し、武器をとって立ち上がるべきだ」と訴えた。

侵攻開始直後に志願

センツォフ氏は2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始直後、ウクライナ軍傘下の義勇兵部隊「領土防衛隊」に志願し、キーウ攻防戦をはじめとする主要な戦いに参加。23年夏の南部ザポリージャ州でのウクライナ軍の反抗作戦では露軍の砲撃で顔や手足を負傷している。最近、少尉から中尉に昇進した。

11~21年に3本の劇映画の監督を務めた。だが、ロシアの侵攻開始を受けて一切の躊躇なく映画制作から手を引き、戦場に赴いた。「祖国と私の家族、そして私自身の生存がかかっているのだ。何ら驚くべきことではない」と語る。

新作が公開される運びとなったのは、身体装着型の小型ビデオカメラがたまたま作動していたのがきっかけだ。敵弾が頭上をかすめる中、塹壕に潜む兵士が疲労と緊張の中で会話する様子などを約18時間にわたって撮影していた映像のうち、90分を一切編集せずに切り出し、「リアル」の題名を付けて発表した。

「映像の存在に気付いたのは撮影から1カ月後だった。最初は映像を消去しようかと思ったが、知人らと相談し、発表することにした。戦争の実相を映し出していると思ったからだ」

奪われた故郷へ強い思い

ウクライナ南部クリミア半島シンフェロポリ生まれのロシア系。だが、14年のロシアによる半島の一方的な併合に異を唱えて露当局に逮捕され、15年に反テロ法違反の罪で禁錮20年の判決を受けて収監された。

獄中ではハンストを展開し、18年に欧州議会から優れた人権活動家に贈られる「思想と自由のためのサハロフ賞」を受賞。19年にロシアとウクライナの間の捕虜交換で釈放された。

奪われた故郷への思いは強い。「ロシアの侵略はクリミア半島から始まった。だからこそ、この戦いはクリミア半島(の奪還)で終わるべきだ」と訴える。

前線では「勝利の手応えを感じる」とも話す。軍の機密で詳細は語れないとしつつ「捕虜にした露軍兵士の士気が著しく低下している」と指摘する一方、ウクライナ軍はロシアのクルスク地域への越境攻撃で各段に将兵たちのムードが明るくなったと強調した。

「世界は欧米や日本など民主主義や人権を重視する陣営と、専制主義勢力の中露やイラン、北朝鮮との対決の構図が明確になった」とも述べ、こう力説した。

「戦後日本の平和主義は立ち行かないことを知ってほしい。私たちは理想の世界に生きていないのだ」

(キーウ 黒瀬悦成)

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