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ウクライナ、大国依存から「自ら汗かく」外交への脱却 松田邦紀大使インタビュー

産経ニュース / 2024年6月30日 9時0分

6月8日、ウクライナの首都キーウで講演する日本の松田邦紀大使(在ウクライナ日本大使館提供)

松田邦紀・駐ウクライナ大使が29日までに産経新聞のインタビューに応じた。ロシアに侵略されるウクライナの活発な外交について、「公正な平和」の実現に向けた自主的な努力であり、大国に依存して国の運命まで左右されることになった過去の外交から脱却しようとしているのだと指摘した。大使の発言の要旨は以下の通り。

6月中旬、ウクライナのゼレンスキー大統領が提唱する和平案を話し合うためにスイスで開かれた「世界平和サミット」には、100カ国・機関が参加し、そのうち約80が共同声明を支持した。ウクライナ側は成功だと評価し、私も大きな意味があったと考える。

ロシアの侵略を巡ってはこれまで、国連総会や先進7カ国首脳会議(G7サミット)などで議論されてきた。世界平和サミットはその中で初めて「ウクライナの平和」に特化した国際的な首脳会議だった。一部の国は声明への支持を見送ったが、主権や領土の一体性に異を唱える国は皆無だったと聞く。国連憲章を含む国際法の原理・原則が平和の重要な土台との認識が確認されたのだ。

庇護求めた歴史への反省

サミットは、公正かつ永続的な和平の実現を目指すウクライナの主体的な外交努力の一環だ。この背景には歴史への反省がある。

ウクライナは13世紀のモンゴルによる侵攻以来、独立や主権を保つために大国に庇護(ひご)を求め、依存してきた例が多い。近年でいえば、2014年のロシアによる南部クリミア半島の併合や親露派武装勢力との東部紛争の際、米国や欧州の助けを待つ姿勢だった。東部紛争の和平を定めた「ミンスク合意」では、ドイツやフランスといった欧州主要国にすがった側面がある。

ただ、数少ない主要国に頼れば、それらの国の思惑でウクライナの運命が決められてしまうとの認識が、今回の侵略で強まった。

「もしトラ」にも備え

ウクライナは大国依存を避けるため、G7など欧米諸国に協力を仰ぐと同時に、中東や中央・南アジア、中南米、アフリカにも自国の立場を伝えようと自ら汗をかいている。ロシアとの外交交渉に備え、一国でも多くの国に味方になってもらおうとしており、ロシアへの外交圧力にもなる。

11月の米大統領選を控え、ウクライナ側はバイデン政権と共和党のトランプ前大統領陣営の双方と公式・非公式に意見交換などしている。「もしトラ」に危機感を抱く様子はみられない。

ロシアのアジア外交本格化

一方、ロシアのプーチン大統領は北朝鮮と「包括的戦略パートナーシップ条約」を結び、ベトナムにも訪問した。ウクライナを侵略したプーチン氏がアジアでの外交を本格化させてきたことで、アジア太平洋の平和と安定に影響を及ぼすのか、日本は真剣に注視する必要がある。

「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」という岸田文雄首相の問題認識の正しさが示された。日本には新たな状況の分析や危機感を欧米諸国と共有することが重要となる。7月に米ワシントンで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議はそのための重要な外交行事となるだろう。(聞き手 岡田美月)

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