トランプ氏のグリーンランド買収発言に欧州が反発 北極海戦略の変化が「覇権主義」背景に
産経ニュース / 2025年1月9日 9時54分
【ロンドン=黒瀬悦成】トランプ次期米大統領がデンマーク領グリーンランドの買収に向けて軍事力の行使も排除しないと発言したことに対し、欧州諸国から反発の声が相次いだ。発言の背景には、気候変動を受けた北極海地域の戦略的価値の高まりがある。一方でカナダ合併やパナマ運河返還と併せ、領土拡張の意思を強める覇権主義的なトランプ氏の態度は、ロシアのウクライナ侵略や中国による台湾の一方的統一を正当化する口実にも利用されかねない。
デンマークのフレデリクセン首相は7日、「グリーンランドは売り物ではなく、将来に売りに出されることもない。デンマーク国民もこの立場を支持している」と述べ、トランプ氏の発言を一蹴した。
フランスのバロ外相も8日の公共ラジオの番組で、グリーンランドは欧州連合(EU)に加盟するデンマークの領土であり「どの国であろうと、その領土を攻撃するのをEUは決して容認しない」と強調した。
ドイツ政府報道官も8日、武力による威嚇や武力行使で他国の領土を脅かすことを禁じた国連憲章の原則に照らし、米国による武力行使を認めないとの立場を打ち出した。
トランプ氏は1期目の2019年にグリーンランドの購入に意欲を示したが、デンマークの反発を受けて断念した経緯がある。
グリーンランドは米国からみてロシアに臨む位置にあることから、米国は1951年にデンマークと安全保障協定を結び、グリーンランドに当時のソ連の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の動向を監視するための米軍基地を設置。現在も対露監視の重要拠点として運用を続けている。
加えて、グリーンランドでは近年の地球温暖化を受け、これまで分厚い氷の下に眠っていたレアアース(希土類)など豊富な鉱物資源の開発機運が広がっており、中国やロシアがこれらの権益を狙って進出を図っていると指摘される。
また、北極海を通って大西洋と太平洋を結ぶ北極海航路が温暖化の影響で砕氷船なしで航行できつつあるようになり、グリーンランドの戦略的な価値が上がってきていることも、トランプ氏が関心を強める要因になっているとみられる。
一方、グリーンランド自治政府のエーエデ首相が今月3日の演説で独立の意向を強調したことも、トランプ氏が取得に動く契機になったとも指摘される。
グリーンランドは53年までデンマークの植民地だったが現在は自治領。2009年に両者の間で結ばれた協定では、グリーンランド議会の議決と住民投票を通じて独立が可能になると規定された。住民の過半数は独立に賛成とされ、トランプ氏はグリーンランドが独立を果たした際に取引を持ち掛ける可能性もある。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
トランプ氏、安全保障の対応を強調 対中国でグリーンランド・パナマ運河の獲得に意欲
産経ニュース / 2025年1月9日 18時37分
-
アングル:トランプ次期米大統領、グリーンランドの購入は可能か
ロイター / 2025年1月8日 13時57分
-
トランプ次期米大統領〝グリーンランド発言〟の波紋 中国の資源開発を警戒、デンマークは防衛予算を拡大
東スポWEB / 2025年1月6日 6時9分
-
トランプのグリーンランド購入案にロシアが喝采を送る理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月25日 19時20分
-
焦点:早くも「威嚇外交」、トランプ氏パナマやグリーンランド発言の真意
ロイター / 2024年12月25日 7時19分
ランキング
-
1中国の戦狼外交は「大失敗」「孤立していった」 駐日米大使、各国との連携網構築を強調
産経ニュース / 2025年1月9日 18時8分
-
2ロサンゼルス山火事、急な避難指示で車を乗り捨て脱出する住民も…雨季なのに「異常な乾燥」8か月
読売新聞 / 2025年1月9日 17時9分
-
3邦人被告、核物質密輸の罪認める=「ヤクザ」幹部、ミャンマー武装勢力と共謀―米裁判
時事通信 / 2025年1月9日 14時28分
-
4チベット地震 被災者は6万人超える AIを使った「偽物救出映像」に批判も
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年1月9日 19時22分
-
5バイデン氏、米大統領史上初の曾祖父に 山火事の会見で「いい知らせ」発表に批判も
産経ニュース / 2025年1月9日 17時37分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください