1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 欧米

紛争に温暖化、LGBT論争…世界を映したパリ五輪 それでも示した「人間の力」の希望

産経ニュース / 2024年8月12日 13時1分

パリ五輪閉会式で、 花火が上がったフランス競技場=8月11日(沢野貴信撮影)

パリ五輪が11日、閉幕した。華やかな花火が閉会式の夜を締めくくった。何かと物議を醸す大会でもあった。

7月26日の開会式では、派手な女装のドラァグクイーンが食卓に並ぶ演出が、カトリック教会や保守派の猛反発を浴びた。イエス・キリストの「最後の晩餐」のパロディー化だとみなされたからだ。式典の芸術監督は「フランスは多様性や自由を尊重する国」と反論し、価値観の違いを浮き彫りにした。

環境対策を巡る「理想と現実」の落差も示した。

大会組織委員会は温室効果ガス排出量の削減を目指し、選手村からエアコンを排除した。「選手の体調第一」と考えた日米や欧州各国は計2500台を自前で調達した。製造や輸送過程を考えれば、排出量削減につながったかどうかは疑わしい。トライアスロンは、セーヌ川の不安定な水質に日程を左右された。

一連のトラブルは、いまの米欧政治を反映している。「LGBTの権利」や「地球温暖化対策」で、妥協なき目標を掲げる急進派と、現実社会との調和を重視する穏健派との分断が広がる。

祭典さなか、中東、ウクライナは危機深まる

だが、そんな政治対立は、五輪をとりまく世界の緊迫を見ればかすんでしまう。

大会のさなか、イスラエルと交戦するイスラム原理主義組織ハマスの最高指導者がイランで暗殺された。中東は新たな報復の連鎖の瀬戸際にある。ウクライナはロシア領への越境攻撃に踏み切った。フランスの隣国、英国では反移民暴動が続いた。

パリ五輪の最大の成果は、これほど不安な世界でもスポーツを通じて集うことができると示した点ではないか。

イスラエルやイラン、ウクライナの選手たちはメダルを勝ち取り、各国民を興奮させた。戦火のパレスチナからも選手が来た。国際オリンピック委員会(IOC)と国連が呼びかけた「五輪休戦」は実現しなかったが、小さな希望は残った。懸念されたテロやサイバー攻撃は起きなかった。

歴史の舞台とスポーツの融合

開催国フランスは、1900年のパリ五輪以来最多となる64個のメダルラッシュに沸き、国民は一体感に酔いしれた。ベルサイユ宮殿やエッフェル塔前に競技会場が設けられ、国の歴史が現在に結びついた効果は大きかった。熱波の中の「エコ五輪」は、今後の五輪開催に向けて課題を提起した。

17日間の大会は、多くの名場面を生んだ。柔道女子48キロ級で金メダルを決めた角田夏美のともえ投げ、体操男子3冠の岡慎之助が見せた美しい着地―。AI(人工知能)の時代でも、人間の意思、肉体の躍動が強い感動をもたらすのだと教えてくれた。全力を尽くした選手の笑顔と涙は、同時代を生きるわれわれを励ましてくれる。「五輪の力」を、あらためて思い知らされた。(三井美奈)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください