テレグラム、強権国家では民主化運動の「命綱」 戦場で活用のロシアは仏の捜査介入に圧力
産経ニュース / 2024年9月16日 16時3分
秘匿性が高く、凶悪犯罪の温床になってきたと指摘される通信アプリ「テレグラム」だが、表現の自由が制限される強権国家では、反政府運動の「命綱」の役割を果たしてきた。規制強化が過度に進めば民主主義の後退につながる恐れもあり、慎重な議論が求められる。
2019年に香港で続発した反政府デモで、若者らは秘密裏に情報を交換するためテレグラムを使用。目立ったリーダーが不在の中でも最大200万人(主催者発表)が参加する抗議デモなどを実現させた。ミャンマー、イランなど各地の反体制運動でも活用されてきた。
権力介入の排除にこだわるテレグラムの原点も、反体制運動を巡る苦い経験にある。
ロシア出身の創業者、ドゥーロフ氏は22歳で独自のSNS(交流サイト)を開設。旧ソ連圏で爆発的な人気を集めたが、野党の活動などに関する情報提供要請に応じなかったことで露当局の圧力を受け、同氏は事実上の亡命を余儀なくされた。テレグラムは、通信の自由を守る狙いから開発されたといえる。
一方、近年は体制側がテレグラムを「逆利用」する事例も確認される。ドゥーロフ氏を「追放」した当のロシアは、その後、テレグラムのアプリ利用を一転して容認し、多くの政府高官らが情報発信に活用。露軍によるウクライナ侵略を巡り米紙ウォールストリート・ジャーナルは、戦場での交信活動で、露軍兵がテレグラムに依存していると報じた。
ドゥーロフ氏逮捕を受け、ラブロフ露外相は「露仏関係は最低水準に落ち込んだ」と仏側を非難。捜査介入を打ち切るよう圧力を強めている。
(時吉達也)
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