ロシア、タリバンをテロ指定解除へ 反欧米陣営に取り込み 国際・国内情勢変化背景に
産経ニュース / 2024年12月2日 8時49分
アフガニスタンを2021年に掌握したイスラム原理主義勢力タリバンを巡り、ロシアが国内での活動を禁じる「テロ組織」指定の解除に向けた動きを進めている。ロシアは、反米のタリバンを北朝鮮やイランなどとつくる反欧米陣営の一角に取り込み、ウクライナ侵略で決定的に対立した欧米諸国に対抗する思惑だとみられている。
露上下両院の議員団は11月25日、露国内でのテロ組織指定の解除手続きを定める法案を下院に提出した。法案は、テロ組織に指定されている組織に関し、新たな情報が得られた場合に検事総長などの要請で指定を取り消せるとする内容。法案に具体的な組織名は書かれていないものの、露メディアは一様に「タリバンの指定解除を念頭に置いたものだ」と伝えた。
そうした見方が出る背景には、露政権が最近、タリバンとの連携に積極姿勢を示してきたことがある。
露外務・法務両省は5月27日、プーチン大統領に「タリバンはロシアの敵ではなく、テロ組織の指定解除は可能だ」と報告。プーチン氏も翌28日に「タリバンは現在のアフガンの統治者だ。この現実に基づいて関係を構築する必要がある」と述べ、タリバンとの関係強化に意欲を示した。ロシアは9月に主催した国際会議「東方経済フォーラム」にもタリバンを招待。ウシャコフ露大統領補佐官は10月、「タリバンのテロ指定解除に取り組んでいる」とタス通信に述べた。
ロシアがタリバンとの協調に動き出した主な要因は国際・国内情勢の変化だ。
ロシアがタリバンをテロ組織に指定したのは03年。プーチン氏は当時、01年の米中枢同時テロを実行した国際テロ組織アルカーイダと、同組織と協力関係にあったタリバンに対する米英の壊滅作戦を支持するなど欧米との協調政策を進めていた。ロシアはタリバンのテロ組織指定で欧米との連携強化を図った。ロシアにはまた、イスラム教徒が多い露南部チェチェン共和国の独立派勢力とイスラム組織が結託する事態を防ぐという国内的事情もあった。
しかし、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大などでロシアと欧米の関係は徐々に悪化。ロシアが14年にウクライナ南部クリミア半島を併合し、22年にはウクライナへの全面侵攻を開始したことで両者の断絶は決定的になった。露国内でもチェチェン独立闘争が収束した一方、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)によるテロが新たな脅威となっている。
ロシアはタリバンとの関係を構築することで、反欧米陣営を強化すると同時に、ISと敵対するタリバンと対テロ対策で協力を進めたい考えだとみられる。(小野田雄一)
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