ウクライナ語が失われる 戦争長期化で蝕まれる教育現場 危機に立ち上がった母親たち ウクライナ隣国から~戦禍の子供たちは今~
産経ニュース / 2025年2月3日 12時0分
ウクライナの有名な詩人、タラス・シェフチェンコの詩を書く子供たち。避難先のポーランドにある小学校を借りて、自助団体が母国語や文化を教えている=2025年1月22日、ポーランド・オトフォツク(坂本龍太朗さん提供)
ポーランドに避難してきた子供たちとは当初、全く戦争の話をしませんでした。親から戦争が起きたことを知らされず、国境を越えてきた子が多かったからです。「お母さんと数日、外国旅行に行くだけ」。説明を信じて母親についてきた子供たち。私に、笑顔で「初めての海外なの!」と異口同音に感想を口にしていました。一度、母親たちに「戦争のことを子供に説明しますか?」と聞きましたが、「なんで戦争になったのか、私たちも理解できていない」という答えが返ってきたことを今でも忘れられません。
ロシアによる侵略から24日で3年。疑う余地もなく、戦争は子供たちの日常となりました。その影響は、教育環境をも容赦なくむしばんでいます。
ウクライナでは、軍事費の増強で教育予算が削られ、空襲で破壊された窓や壁を直せず、地下施設に学校を移設するケースも多く見られます。
核の脅威に覆われた冷戦時代にウクライナで建てられた学校には地下があるのが普通です。その地下に机や椅子を持ち込んだり、空爆が激しい北東部では地下鉄駅構内に学校を移設したりしています。空気の悪い地下で過ごす時間が増え、呼吸器系の疾患を抱える子供も増加しています。
地下がない学校では、安全面から登校許可が下りず、オンライン授業を強いられています。私も一度、参加しましたが、音声はうまく聞き取れず、カメラの質も悪い。先生も大変そうで、会議用マイクなど支援物資を送りました。また、参加にはパソコンやスマートフォンが必要ですが、地方では準備できる家庭はごく少数に限られています。
一方、ポーランドに避難を続ける子供たちの状況も深刻で、ウクライナ語の読み書きを忘れつつあります。
小学1、2年生で避難した子供たちは読み書きを学んでおらず、今はポーランド語の授業についていくのに精いっぱい。母親らも生活費を稼ぐのに忙しく、それどころではありません。危機感を抱いた一部の母親らが、母国語や歌、伝統を教える自助団体を立ち上げ、活動しています。私もメンバーの1人ですが、13~15歳の子供でも、よくつづりを間違っています。
母国語の退化は、ウクライナ人というアイデンティティーの喪失にもつながります。戦争が子供たち、そしてウクライナの将来にどう影響を与えるのか心配でなりません。
(日本語学校教頭 坂本龍太朗)
=次回は3月3日掲載予定
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