「不正選挙の背後に中国がいる」尹氏側、戒厳の必要性訴え 多くの証言と食い違い目立つ
産経ニュース / 2025年1月19日 19時22分
【ソウル=桜井紀雄】韓国の現役大統領として初めて内乱首謀などの疑いで逮捕された尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と弁護団は、不正選挙疑惑を暴くためにやむを得ず、「非常戒厳」を宣布したと訴えている。中国の介入疑惑も提起したことで、一部保守層の熱烈な支持を確保した。一方で、共犯として逮捕・起訴された軍や警察幹部らの証言と矛盾する点は多く、主張のほころびも出始めている。
尹氏、保守層意識か
「中国や北朝鮮が中央選挙管理委員会のシステムをハッキングする試みがあった」。憲法裁判所で16日に開かれた尹氏の罷免の可否を判断する弾劾審判の第2回弁論で、尹氏側はこう指摘した。答弁書で「不正選挙の背後には中国がいる」と指摘し、革新系野党が韓国を「中国と北朝鮮の植民地にしようとしている」との主張を展開した。
尹氏は昨年12月の戒厳で国会に加え、中央選管にも兵力を投入。サーバーなどを押収することで不正選挙の証拠を確保しようとしたとされる。尹氏側は弁論で、選管の研修施設に滞在した中国人の名簿提出を要請した。
尹氏はこれまでも不正選挙疑惑の解明が戒厳の目的の一つだった点に言及してきたが、新たに中国への警戒感が強い保守層に受け入れられやすい中国の介入疑惑を持ち出した。尹氏側はこうした主張を掲げて支持層の結集を図りながら、今後の捜査や弾劾審判で戒厳の正当性を訴えていく戦略とみられる。
「平和的」と釈明も
尹氏の内乱容疑の柱となっているのが、戒厳当日に発表した、国会を含む「一切の政治活動を禁じる」とした布告文だ。国会での戒厳解除要求決議の可決を妨げた違憲行為とみなされている。
尹氏側は弾劾審判で、戒厳を主導したとして起訴された金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相が過去の例文を誤って書き写したものだと主張した。それに対し、金氏側は「大統領の検討を経た正当な内容だ」と反論。尹氏を擁護してきた最側近の金氏とさえ弁解の食い違いが露呈した形だ。
尹氏側は、国会への兵力投入についても秩序維持のための最小限のもので「平和的戒厳だった」と釈明する。だが、司令官が「尹氏に『銃を撃って扉を壊してでも(議員を)引きずり出せ』と指示された」と供述するなど、共犯として逮捕・起訴された軍や警察の幹部らの多くが国会での可決妨害に関し、尹氏の直接指示を証言している。
尹氏の主張は、支持者らの熱狂的な支持とは裏腹に、多くの証言との食い違いが目立ち、尹氏の孤立を印象づけている。
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