韓国の尹大統領、対日で見せた果断さは「独善」に転化 信念で突き進むも早期退陣不可避に
産経ニュース / 2024年12月7日 16時19分
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は7日、「非常戒厳」宣布について謝罪し、自身の任期問題を与党に一任すると表明、早期退陣が不可避となった。世論の反対も恐れず、信念で突き進む政治スタイルで早期の日韓関係改善を実現させた。だが、他人の意見になびかない姿勢はいつしか「独善」に変質し、政治的な挫折を招いた。
「人に忠誠を尽くさない」。尹氏は朴槿恵(パク・クネ)政権時代、政権の意向に反して情報機関の捜査を進めたことを巡りこう発言した。権力者におもねらずに法治主義を貫く立場を強調した。こうした態度は文在寅(ムン・ジェイン)前大統領に評価され、検事総長に抜擢(ばってき)されたが、文氏の側近の捜査もためらわなかった。
文政権と闘う「英雄」として保守層の支持を集め、大統領に当選。尹氏が「親北朝鮮勢力が暗躍する」と主張する韓国社会の「正常化」に取り組み始めた。北朝鮮の脅威から国を守るためには日米との安全保障協力が不可欠だとして反対論が強かった対日関係改善にかじを切った。支持率が急落しても「対日関係を改善する」と強調した。
韓国内で顧みられてこなかった脱北者の権利向上や北朝鮮による韓国人拉致問題の解決にも力を入れ、拉致問題で日本との連携を打ち出した。「北の政権に苦しめられている同胞から決して目をそらさない」との演説に脱北者らが涙した。世論受けより人権や自由民主主義という価値観を優先した。こうした取り組みに否定的な野党を「反国家勢力」と呼び、戒厳宣布という強硬手段で排除しようとし、法治主義を自ら踏みにじった。
野党は尹氏への弾劾訴追案で「北朝鮮や中露を敵視し、日本中心の奇異な外交政策に固執した」と批判した。尹氏の政治的挫折で、対日協力路線まで否定されかねない。脱北者や拉致被害者家族が尹氏に託した期待も裏切ることになった。尹氏は彼らにどう言葉をかけるつもりなのか。
(ソウル支局長 桜井紀雄)
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