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民主化の歴史覆す事態、尹大統領の弾劾可決も 慶応大東アジア研究所所長 西野純也教授

産経ニュース / 2024年12月4日 21時10分

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は3日夜、非常戒厳を発令したが、国会の決議を受け約6時間後の4日早朝、戒厳は解除された。慶応大東アジア研究所所長で、韓国政治を研究する西野純也教授は、韓国国会で野党に過半数を握られ、国政運営の停滞への危機感が背景にあると指摘。一方、「現状が憲法上認められた事由にあたるとは思えない」と述べ、尹氏に対する弾劾決議案の可決もありうると分析する。

民主化から40年近くたつ韓国で(軍部が行政を掌握する)非常戒厳が出されたことは、民主化の歴史を覆すような行いであり、韓国国民にとって容認できない事態だ。ただ、混乱の中にあっても国会は粛々と戒厳の解除決議によって尹錫悦大統領の過ちを正し、韓国の民主主義が揺らぐことはないと国際社会に示したといえる。

非常戒厳は戦時など非常事態に際して発令するものだ。尹氏は、野党が官僚の弾劾で司法や行政を麻痺(まひ)させ、国会を利用して「体制転覆」を図っていると理由を述べたが、現状が憲法上で認められた事由にあたるとは思えない。尹氏には4月の総選挙で与党が大敗し、野党に国会で過半数を握られ、国政運営の停滞への危機感があったようだが、発令直前に開いた閣議では大半の大臣が反対したとの報道もある。国会に通告しにくい夜間に発令したことなど、手続き的に瑕疵(かし)がある可能性もある。

元来、韓国大統領の権限は強く、信念に基づいて政策を推し進める尹氏の性格もあって極端な決断に至ったとみられる。しかし、国会の議決を受けてすぐに解除するならなぜ発令したのか。一部側近の建議に影響を受けたことも考えられる。

解除の国会決議には与党からも一部議員が賛成した。尹氏に対する野党の弾劾訴追案についても、与党議員が加わる流れが強まれば可決もありうる。尹氏が辞任するシナリオを含め、予断を許さない。

一方、日韓を取り巻く安全保障情勢は依然厳しい。尹氏は日韓関係の改善に向け強いリーダーシップを発揮してきたが、政権の不安定化により日韓関係にはマイナスの影響が想定される。日本政府は状況を管理する必要に迫られるだろう。(聞き手 石川有紀)

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