ごみ風船巡り高まる緊張 朝鮮戦争７４年、尹大統領「力こそ国を守る」

【ソウル＝桜井紀雄】韓国軍は２５日、北朝鮮が前日からごみなどをぶら下げて韓国へ飛ばした風船約３５０個を確認したと発表した。約１００個がソウルや近郊の京畿道北部などに落下。韓国の脱北者団体が２０日、北朝鮮へ金正恩体制を批判するビラを風船で散布したことに対し、北朝鮮が報復を予告していた。

朝鮮半島全域が戦場と化した１９５０年の朝鮮戦争勃発から２５日で７４年。韓国と北朝鮮の間では、ビラ散布を巡る応酬にとどまらず、軍事的緊張が高まっている。

韓国の尹錫悦大統領は南東部、大邱での式典で演説し、北朝鮮のごみ風船散布を「卑劣な挑発」と非難。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記とロシアのプーチン大統領による「包括的戦略パートナーシップ条約」締結について「国連安全保障理事会決議に真っ向から違反する」とし、「歴史の進歩に逆行する時代錯誤の行動」だと批判。その上で「強い力こそが国を守る」と強調した。

韓国は近く、日米と新たな共同訓練「フリーダムエッジ」を実施する予定。北朝鮮は南北軍事境界線付近で防壁を新設するなど、軍事的対抗姿勢を強めている。

北朝鮮の党機関紙、労働新聞は２５日付の社説で、米韓は「不変の主敵だ」と敵意を強調する一方、金氏に対するプーチン氏の謝辞を１面に掲載し、露朝関係の深化を誇示した。

北朝鮮のごみ風船を巡り、韓国統一省は２４日、ごみに含まれる土を解析した結果、寄生虫が多数検出されたと発表した。人糞から出たとみられるが、感染症の恐れはないという。韓国側が過去に北朝鮮に支援した衣類を切り刻んだとみられる布切れも見つかった。同省は、敵対心を示す狙いだと分析している。