イスラエル「限定的」強調も見えぬ出口戦略 ヒズボラ標的にレバノン南部へ地上侵攻
産経ニュース / 2024年10月1日 20時18分
【テルアビブ=佐藤貴生】イスラエル軍が親イラン民兵組織ヒズボラを標的とし、レバノン南部への限定的な地上侵攻を開始した。イスラエルのネタニヤフ政権は、パレスチナ自治区ガザでイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘が継続する中、戦線の拡大を選択したが、その出口戦略は見えない。攻撃は「限定的」なものにとどまらない恐れがあり、中東情勢の混迷はさらに深まりそうだ。
「ヒズボラはレバノンの村々をイスラエル攻撃に備えた軍事基地に変えた」。ロイター通信によると、イスラエル軍報道官は今回の攻撃はレバノン国民ではなく、あくまでヒズボラを狙ったものであることを強調した。
イスラエル軍は9月、レバノンの首都ベイルート南郊などにあるヒズボラの拠点を攻撃し、複数の幹部司令官に続いて指導者のナスララ師を殺害した。
昨年10月のガザでの戦闘開始後、ヒズボラはイスラエル北部を繰り返し攻撃しており、イスラエル側住民約6万人が避難を余儀なくされている。ネタニヤフ政権は、ヒズボラを国境地帯から撤退させ、避難民の帰還を実現したい考えだ。
ネタニヤフ氏がヒズボラとの戦闘に本腰を入れたのは「ガザでの戦闘でハマスの壊滅や人質の解放が実現できておらず、何らかの成果が必要だったからではないか」(西側外交筋)との見方もある。
ただ、ヒズボラはゲリラ戦にたけ、今後激しい抵抗が予想される。イスラエルは軍事力でヒズボラを圧倒する狙いとみられるが、思惑通りに事態が進むとはかぎらない。
既に欧米メディアではイスラエルの侵攻に対する厳しい見方が漂う。イスラエルは1982年と2006年にレバノンに侵攻したが、米CNNテレビは望ましい結果は得られなかったと評した。
CNNに出演したイスラエルの政治評論家は「侵攻は簡単だが出るのは容易ではない」と述べ、イスラエルはガザでも出口戦略が描けず戦闘が泥沼化していると警告した。この政治評論家は、ハマスもヒズボラも壊滅させるのは「不可能だ」とし、打撃を受けたとしても勢力を立て直し、反イスラエル武装闘争を続けるとの見通しを示した。
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