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ガザ戦闘から7日で1年 米、イラン抑止の中東戦略に狂い 中国、パレスチナ寄り鮮明に

産経ニュース / 2024年10月6日 11時30分

パレスチナ自治区ガザのイスラム原理主義組織ハマスによるイスラエル奇襲攻撃から7日で1年となる。イスラエルとハマスの戦闘は長期化。さらにイスラエルとイランが交戦、イスラエルがレバノン南部への地上侵攻に踏み切るなど、紛争は拡大の様相を強めている。

この1年間の動きは、バイデン米政権が目指したイラン抑止戦略に大きな狂いを生じさせた。米国はガザ停戦や緊張緩和に向けたイスラエルへの働きかけなどで後手に回っており、事態を制御できずにいる。

アラブ諸国、イスラエルと距離置く

ロイター通信が3日に伝えたところでは、米国と防衛協力を結ぶサウジアラビアやカタールなどの湾岸アラブ諸国はドーハで外相会合を開き、イランとイスラエルの対立で「中立」を保つことを確認した。米国は近年、イランの脅威を念頭にイスラエルとアラブ諸国の協力態勢構築を急いできたが、アラブ側はイスラエルと距離を置くことを選んだ格好だ。

ブリンケン米国務長官は5日、カタールのムハンマド首相兼外相と電話会談し、ガザ停戦に向けた協力などを協議。ただ、イスラエルの戦線拡大を抑えられない現状では、米国の外交的影響力の低下は否めない。

米、「核合意再建」からイラン封じ込めへ

バイデン政権はもともと、トランプ前政権が2018年に一方的に離脱したイラン核合意の再建を目指してきた。イランの核開発に一定期間の歯止めをかけて域内の緊張を緩和し、中東安定に向けた長期的な取り組みを可能にするためだ。

だが、22年に再建協議が行き詰まり、バイデン政権は方針を転換。トランプ政権が20年に仲介したイスラエルと一部アラブ諸国の国交正常化(アブラハム合意)を基礎に、イランの封じ込めを図る戦略にかじを切った。サウジアラビアとイスラエルの国交正常化を仲介し、両国を域内安全保障協力の中核とする構想で、23年秋には交渉の大きな前進が伝えられた。

ハマスがイスラエルに奇襲を仕掛けたのは、このタイミングだった。動機の一部には、米構想の進展でパレスチナ問題が置き去りになるのを阻止する狙いがあったとみられる。

一方、ガザの人道危機が深刻化する中で、アラブ諸国では、イスラエルの攻勢を制止できない米国への信頼低下に拍車がかかった。バイデン政権はこの1年間、紛争の拡大を避けるための弥縫(びほう)策に終始し、地域の安定化に向けた道筋は見いだせずにいる。(ワシントン 大内清)

中国、米・イスラエルに対抗へと姿勢変化

イスラエルとハマスの戦闘が始まってからの1年間で、中国はパレスチナ寄りの立場を鮮明にした。イスラエルを支える米国に対抗し、両国に反発する新興・途上国を取り込む戦略を進めている。

中国の王毅共産党政治局員兼外相は9月23日、国連総会が行われた米ニューヨークでレバノンのハビブ外相と会談し、イスラエルによるレバノン大規模空爆を強く非難。「(中国は)レバノンを含むアラブの兄弟の側に立つ」と表明した。

中国は昨年10月7日の戦闘開始直後には「中国はイスラエルとパレスチナの共通の友人だ」(外務省報道官)として比較的中立の立場を示していた。ただ、中国は一貫して戦闘開始のきっかけとなったハマスの襲撃を非難せず、戦闘が激化するにつれてパレスチナ寄りの姿勢を強めていった。

中国の姿勢の変化には、対米戦略が影響しているとみられる。ガザ攻撃を続けるイスラエルを米国が支えていると批判し、国際社会で存在感を高める思惑があると指摘される。エネルギー安全保障の強化に向けてアラブ諸国に接近することや、米国とイスラエルに反発するグローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)の支持を得る狙いもうかがわれる。

中国は中東問題で「仲介外交」を積極化させており、今年7月にはハマスなどパレスチナ各派を北京に招いて和解協議を行った。ただ、ガザ情勢に関して中国は「停戦の早期実現」を強調しつつ、現時点で主導的な動きは見せていない。

香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)は今月5日、イスラエルが関係の悪化した中国を停戦仲介に関与させる可能性は低く、中国の仲介外交に期待していた人々にとって「ガザ危機は中国の(仲介への)関与と能力の欠如を示した」とする専門家の見方を伝えた。(北京 三塚聖平)

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