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川口のクルド人「難民でなく移民」「いなか出身者の行動」トルコ人著名ジャーナリスト語る 「移民」と日本人 クルド人が川口を目指す本当の理由⑤

産経ニュース / 2024年11月28日 11時30分

ムラット・イェトキン氏。背後はアンカラ市街=トルコ・アンカラ

埼玉県川口市に集住するトルコの少数民族クルド人の故郷を訪ねた後、首都アンカラで著名なトルコ人ジャーナリストに会った。ムラット・イェトキン氏(64)。川口のクルド人問題について「クルド人だからではない。いなかの出身者だからだ」と指摘。「彼らは難民ではない。よりよい生活を求めての移民だ」などと語った。

ベテラン記者との対話

イェトキン氏は、トルコの有力紙ヒュリエト英語版の編集長などを歴任し、現在は自身の名を冠したニュースサイトを運営。政治コラムニストとして現地のテレビでもおなじみのベテラン記者だ。

「カワグチで起きていることはトルコでも同じだ」。川口のクルド人らによる危険運転や大音量の音楽、ごみ出しなどの問題について尋ねると、こう話し始めた。

イェトキン氏は「日本のルールやマナーを守らないのは、彼らがトルコのいなかから、いきなり日本の大都市へ来たからだ。要するに、いなか出身者の行動だ」と指摘。「彼らがルールを守らないなら、警察が注意する。それでも聞かなければ、罰金を科せばよい」

クルド人の多くが日本で難民認定申請し在留を続ける現状については、こう説明した。

「彼らは難民ではない。実際のところは、よりよい生活を求めての移民だ。先に行った者が『稼げるから来い』と言う。『警察や憲兵に迫害されている』として難民申請すればよい。これは日本だけでなく、欧州も同じ問題を抱えている」

2003年からのエルドアン政権によって、トルコはめざましい経済成長を遂げ、クルド人も人権状況だけでなく、生活レベルも大幅に上がったという。イェトキン氏は「トルコでクルド人はトルコ人らと広く混血が進んでおり、最もクルド人の多い都市はクルド人居住地域の南東部にはなく、大都市のイスタンブールだ」と指摘し、同国の非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」の名を挙げて続けた。

「一般のクルド人とトルコ人は決して争ったりしない。この40年間、争っているのはPKKであり、彼らは意図的に問題を大きくしようとしている。この対立の図式を利用して難民申請し利益を得ている人々がおり、カワグチのクルド人もその一部だ」

クルド系の大統領も

イェトキン氏が親しくしているトルコ政府の閣僚がいる。メフメト・シムシェキ財務相(57)。

同国内ではクルド系の国政政党があるほか、閣僚、国会議員、判事、幹部公務員などの要職に就いているクルド人も多数いる。1980~90年代に首相と大統領を務めたオザル氏もクルド系だったことで知られる。

シムシェキ財務相はトルコ南東部のクルド人の多い地方の村で、9人きょうだいの末っ子に生まれた。苦学して欧米の投資銀行などでエコノミストとして働き、トルコ政界入りした立志伝中の人物だ。

イェトキン氏は「私は彼をよく知っているが、本当に努力していまの地位にまでなった人だ」。

自身がクルド人であることを公言しており、副首相時代の2016年、米国での記者会見で、イランのクルド人記者から英語でクルド人の将来について質問された際、「私はトルコのクルド人だ」とクルド語で答えて話題を呼んだ。

今回のトルコ取材で、クルド人の政治家や経済人に取材を申し込んだが、断られることが多かった。一方で、当初は喜んで取材に応じても、後日「私のことを記事に書かないでほしい」と連絡があったことも再三だった。

この過程そのものに、トルコでの「クルド人問題」の複雑さが表れているようだった。自身がクルド人だと表立って言えるのは、シムシェキ財務相のような完全な成功者か、反体制者に限られるのが、トルコの現状のようだった。世界各国の民族問題の「本質」もそのあたりにあるのではないか。

子だくさん、高い移民性

トルコは経済協力開発機構(OECD)加盟国で、欧州連合(EU)加盟は実現していないものの、日米欧の先進国に新興国を加えたG20の一員でもある。一方で、人口8500万人のうち17歳以下が占める割合は26%。中でもクルド人の出生率は比較的高いといわれ、少子化のトルコで人口が増え続けている。クルド人の多い南東部は子供の人口が4割を超える県もある。

そうした地域を訪ねた際、いなかにもかかわらず小学校低学年の子供たちが午後10時、11時まで公園で遊んでいる姿が目についた。大人がついていない場合もあった。子供の夜ふかしはトルコで社会問題ともなっているという。

それは川口市で夜間、クルド人の子供たちが往来で遊んでいる光景と重なった。市内に集住するクルド人約2千人のうち、小中学生は推計約400人と突出して多く、「子だくさん」のクルド人の「移民性」は顕著となっている。

今年3月にトルコのクルド人地域を現地調査した元国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日代表で、東洋英和女学院大の滝沢三郎名誉教授(76)は「彼らの多くが経済的理由で来日している以上、問題解決の方向性も、難民認定よりも合法的な就労の道を探ることに力を入れるほうが理にかなう」と指摘。

その上で「彼らにはいったん帰国してもらい、来日して就労を希望する人にはトルコと日本両政府が協議した上で、技能実習に代わる育成就労制度などにより合法的な入国、滞在の道を開いてはどうか」と提言した。=おわり(「『移民』と日本人」取材班)

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