シリア・アサド政権崩壊から1週間 国民融和、諸外国の協調…課題が山積
産経ニュース / 2024年12月15日 15時0分
シリアでアサド政権が崩壊して15日で1週間となった。暫定政府が発足して国家再生に向けた政治プロセスが始動したが、国民融和に加え、米欧や周辺国が一致して復興を支援できるかなど困難な課題が山積している。中東産原油に依存する日本も無縁ではない。
イスラム過激派のイメージ打破狙う
旧反体制派を主導するのはイスラム過激派「シリア解放機構」(HTS)の指導者ジャウラニ氏だ。内戦下で反体制派が設立した「シリア救国政府」のトップ、ムハンマド・バシル氏を暫定政府首相に指名した。来年3月1日まで活動予定の暫定政府はアサド政権下の国会と憲法を停止し、憲法改正も行う。
国際テロ組織アルカーイダと決別した過去を持つジャウラニ氏は、イスラム過激派という自らのイメージの打破に努めてきた。英BBC放送(電子版)によると、ジャウラニ氏は拠点の北西部イドリブで公共サービスや地域の再建を進め、「近代的で穏健な印象」を打ち出してきた半面、こうした戦術はイスラム保守層の反発を買った。
それでも、米国がHTSのテロ組織指定を見直すかは現時点では不明だ。国民融和を目指すというジャウラニ氏の意向が本心だとしても、障害は国内外に残っている。
ロシアとイランは軍事拠点を失う危機
アサド政権の後ろ盾だったロシアとイランは、シリアに有する軍事拠点を失う危機に直面した。
ロイター通信は14日、シリア駐留ロシア軍が組織再編のため一部拠点から撤退し、装備品を部分的に国外搬出しているとの見方を報じた。露政府筋は欧州や地中海をにらむシリア国内の空軍、海軍基地からは撤収しないと強調するが、暫定政府側は露軍駐留の可否は「今後議論する問題」だとしている。
イランはアサド政権崩壊直後から暫定政府側に接触。イランにとってシリアはレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラへの物資供給に不可欠な戦略拠点だ。是が非でも権益を維持したいとの思惑が透けてみえる。
アサド政権と対立した米欧やトルコの外相らは14日、サウジアラビアなどアラブ諸国の外相らとシリア情勢を協議した。政権崩壊で外交上の主導権がロシア、イランから移りそうな気配だ。
隠匿された化学兵器を発見・廃絶する好機
アサド政権の崩壊は隠匿された疑いがある化学兵器を発見し、廃絶する好機でもある。政権は2013年8月に首都ダマスカス近郊への攻撃で猛毒の神経剤サリンを使用し、民間人千人以上が死亡したとされる。
政権は同年10月、化学兵器の開発や生産、保有を禁じる化学兵器禁止条約に加盟。化学兵器禁止機関(OPCW)はアサド政権の申告に基づいてサリンやVX、マスタードガスなど千トン以上を廃棄したが、使用疑惑はその後も浮上した。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は化学兵器の使用事例が徐々に減ったことから、現存する化学兵器は比較的少量で、安全な調合方法を知らない限り兵器として使用するのは難しいとする専門家の見方を紹介した。とはいえ、何者かが盗んで悪用する可能性が消えたわけではない。(中東支局 佐藤貴生)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
シリア旧反体制派指導者「悪名高い刑務所を閉鎖」と言及 化学兵器の安全確保で国際協調
産経ニュース / 2024年12月12日 16時57分
-
シリア・アサド政権「あっけない」崩壊の裏事情 弱まるイランの影響力、イスラエル一強の時代も
東洋経済オンライン / 2024年12月11日 14時0分
-
シリア反体制派が暫定政府「樹立」 来年3月までの首相にバシル氏
産経ニュース / 2024年12月11日 0時7分
-
シリア、政権移行に向け始動 HTSのジャウラニ氏がジャラリ首相らと協議
産経ニュース / 2024年12月10日 8時36分
-
シリア、独裁崩壊も安定見えず 反体制派が割拠 周辺国の思惑錯綜 過激派増大に懸念も
産経ニュース / 2024年12月9日 14時41分
ランキング
-
1検察、尹氏に出頭要請も応じず=非常戒厳巡る内乱容疑―韓国
時事通信 / 2024年12月15日 20時31分
-
2強固な同盟の維持確認=韓国大統領代行、バイデン氏と電話会談
時事通信 / 2024年12月15日 16時46分
-
3不審な飛行物体、アメリカで目撃相次ぐ…通報5000件にトランプ氏は「国民に知らせるべきだ」
読売新聞 / 2024年12月15日 17時40分
-
4サイクロンで14人死亡 インド洋の仏マヨット
共同通信 / 2024年12月15日 19時21分
-
5インド出身の亀田製菓会長「日本はさらなる移民受け入れを」
AFPBB News / 2024年12月15日 17時45分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください