人質ら身柄交換、ガザ完全撤収…停戦合意の履行に多数の障害 第1段階すらも行方見通せず
産経ニュース / 2025年1月19日 17時49分
【カイロ=佐藤貴生】19日に発効予定時刻を迎えたイスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの停戦合意は、履行に向けて多数の障害が横たわっている。双方は19日も綱引きを展開しており、第1段階の6週間が無事に終了するかも見通せない。
ハマス「屈しない」姿勢
最初の難関は、ハマスがパレスチナ自治区ガザで拘束する人質と、イスラエルが国内で投獄したパレスチナ人の身柄交換が円滑に進むかだ。2023年11月の戦闘休止合意と身柄交換は、相互不信により1週間で終わった。
ハマスは第1段階で33人を解放予定だが、履行は「イスラエルが釈放する人数次第だ」と述べて留保をつけた。
ハマスは停戦合意発表の直後にも、パレスチナ人の間で英雄視される反イスラエル活動家の釈放を求めたと報じられ、イスラエルでの停戦合意の承認手続きが混乱した。住民の信頼を維持するため、今後もイスラエルに簡単には屈しないという姿勢を示す可能性がある。
「停戦崩壊」の危機続く
イスラエル軍は第1段階の間は、エジプトとガザの境界地帯に軍部隊を維持すると明言している。「兵器が密輸された」などと訴えてハマスとの交戦が再燃する可能性は否定できず、停戦崩壊の危険がつきまとう。
続く第2段階は、停戦が恒久化に向かうかの正念場となる。特に、イスラエル軍のガザ完全撤収を伴う「戦闘終結」は難航が予想される。ネタニヤフ氏は18日、第2段階では「攻撃を再開する権利がある」と明言したが、どのような状況を想定しているか詳述していない。
この発言はハマスへの警告である一方、連立政権内部の対パレスチナ強硬派を引き留めるメッセージでもある。
停戦合意に反対する極右2政党のうち、ベングビール国家治安相が率いる「ユダヤの力」は連立から離脱する方針を示したが、もう一つの「宗教シオニズム」を率いるスモトリッチ財務相は、第1段階終了後の戦闘再開を条件に連立にとどまる意向を示したからだ。
政権運営は厳しさを増しており、ネタニヤフ氏はハマスに加え、国内情勢や米大統領交代など、さまざまな変数をにらんで方針を決めていくものとみられる。
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