シンワール氏殺害で停戦見通せず 戦闘継続の見方も 受け継がれる反イスラエル感情
産経ニュース / 2024年10月18日 19時5分
イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザでイスラム原理主義組織ハマスの最高指導者、ヤヒヤ・シンワール氏を殺害したと確認し、欧米では停戦を進める好機だという見方が出ている。成果を手にしたイスラエルのネタニヤフ首相がどう動くかが次の焦点だ。
ハマス統治能力の破壊は「未解決」
シンワール氏殺害を受け、約1年前にハマスの奇襲を受けたガザに近いイスラエルの町スデロトなどでは、人々が街頭に繰り出して歓迎した。殺害はネタニヤフ連立政権の支持拡大につながるとみられ、政権が停戦に傾く可能性は小さいとの見方が多い。
イスラエル英字紙エルサレム・ポスト(電子版)は多数の人質がガザに残っているため事態は「進行中」で、ネタニヤフ氏が目標とするハマスの統治能力の破壊も「未解決」だとし、戦闘継続の可能性に言及した。
ネタニヤフ連立政権に加わる対パレスチナ強硬派の極右、ベングビール国家治安相は17日、「完全勝利」まで戦闘を続けるよう訴え、停戦機運が広がるのを牽制(けんせい)した。
個人暗殺では戦闘終わらず
一方、英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は西側外交筋の話として、ネタニヤフ氏がバイデン米大統領との17日の電話会談で、人質解放のための「戦闘の一時休止」を提案した可能性があると報じた。
組織が弱体化したハマスが、提案を受け入れる余地が広がったとの見方が背景にありそうだ。
約1年前の戦闘開始以降、ハマスでは最高指導者ハニヤ氏や、奇襲を計画した軍事部門「カッサム旅団」のデイフ司令官ら複数の主要幹部が殺害された。イスラエル軍は8月時点で戦闘員1万7千人を殺害したとしており、大打撃を受けたことは疑いない。
ただ、イスラエル軍はこの約1年で4万人超をガザで殺害し、犠牲者の家族や知人、さらには次世代へと反イスラエル感情が受け継がれることは確実だ。欧米メディアでは「個人の暗殺では戦闘は終わらない」といった評論家のコメントも紹介され、ハマスの抵抗は続くとの見方が大勢を占める。後継指導者候補としてはシンワール氏の弟、ムハンマド氏らの名前が早くも挙がっている。
ネタニヤフ連立政権もハマスも、停戦に応じる余地はいずれも少なく、米国などの停戦の調停が奏功するかは不透明だ。(カイロ 佐藤貴生)
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