【収集癖と発表癖】「ナナフシ・マップ」 そこに行けば楽しいことが…

産経ニュース / 2017年11月15日 11時32分

 今はソレのことを勝手に「ナナフシ」、または「ナナフシ・マップ」と呼んでいるのであるが、いつの時代に誕生し、いかなる目的で道路の端が水商売の名刺の如く、角が取れてしまったかは定かでない。

 ナナフシ・マップを説明する前に、そもそもナナフシとは何かについて言及する必要がある。「ナナフシ」の語源は“七節”と表記し、七つの体節を持つ生物とされるが、実際には正しく七つあるわけではない。

 「七」は単に多いという意味であり、節足動物門昆虫綱ナナフシ目に属する昆虫の総称。木の枝に擬態した姿が特徴的である。

 よって、今回紹介する「ナナフシ・マップ」はそれがさらにマップ(地図)に擬態し、街の壁や駅の待ち合い椅子の背もたれ部分に付着、何食わぬ顔で生息しているということになる。

 多くはホーロー看板と呼ばれる主として光沢のある塗装ないし印刷で仕上げられた金属製の看板に姿を現し、店舗や病院への行く道を示しているのではあるが、通常のマップとの大きな違いは極端にまで簡略した“プリティ”さとでも言おうか。

 特に医療機関の場合、子供が行くことをグズリ、親もその説得に長い時間を要する場合があるので、「ほら、この地図見てごらん」と、駅前に貼ったナナフシ・マップを見せ、気持ちを和ませる効果が考えられる。

 先(ま)ず、目に飛び込んでくるのはその太く描かれたナナフシの本体に当たる主要道路。まるで大通りのフリをしているが、実際に行ってみると単なる細い街道だったりする。

 そこから右左にナナフシの由縁である節が何本か延び、そのどこかに目的地の赤い表示が書かれているわけだ。

 その節の先端がやたら丸まっているナナフシ・マップの特徴は何もそこで道が途切れていたり、マラソンの折り返し地点があるわけではない。道はまだ、人生のように続いているのだけれど今日はここまで行けば十分という安心感と、冒頭で述べた水商売の角の取れた名刺の醸し出す“そこに行けば何か、楽しいことが起こるかも”という期待感を子供心に植え付けるためであると、私は睨(にら)んでいる。

 それでもなかなか街でナナフシ・マップに出食わすチャンスは四つ葉のクローバーのように少ない。まだ、研究を始めて間もないが、東急田園都市線、または東急東横線沿線によく出るというのが私の持論である。(作家、イラストレーター みうらじゅん)

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