【九州北部豪雨】「まるでモグラたたき」防災学者も嘆く日本の中小河川整備の実態 「50年の1度」の基準を軽々とオーバー 

産経ニュース / 2017年7月18日 7時1分

(産経新聞)

 福岡、大分両県を5日に襲った豪雨は、気象庁が直前に運用を始めた「流域雨量指数」によって、一部の中小河川で「50年に1度」のレベルをはるかに超える水量が押し寄せていたと推定されることが判明した。大河川と異なり常時観測態勢がなく、氾濫した河川を強化しても別の場所で氾濫が起きるという「まるでモグラたたき」(防災学者)のような整備が続いてきた中小河川。流量を予測できる流域雨量指数の導入で実態解明が進むとみられ、今後はデータに基づき、どのような対策を行っていくかが課題になりそうだ。(社会部 市岡豊大)

「50年に1度」基準を大幅超え

 「500年に1回くらいと言っても過言ではないほどの流量だったのではないか」 

 ある気象関係者は、折れ線グラフで示された朝倉市内3河川の「流域雨量指数」を見て、驚きの声を上げた。今回の豪雨被害が起きた5日の指数の推移は、「50年に1度」の基準を大きく超えていたことを示している。

 流域雨量指数とは、予測雨量を基に、雨が地表や地中から川へ流れ込む過程をモデル化し、河川の流量を予測できる数値だ。気象庁は、洪水危険度の高まりを把握できる指標ととして、4日から流域雨量指数を用いた「洪水警報の危険度分布」の運用を始めていた。

 気象庁のデータによると、朝倉市内を流れる大河川「筑後川」から分岐する中小河川「桂川」の流域雨量指数は、正午には増え始め、午後2時ごろには最も危険度の高い基準を超えた。その後も増加して基準を大きく上回り、ピークは午後7時ごろ。市内で氾濫した「赤谷川」「北川」でも同様に最大危険度の基準を大きく超えていた。

 気象庁関係者によると、この最も危険度の高い基準は「過去の重大な洪水害発生時に匹敵する値」とされ、「50年に1度」規模の流量に相当するという。

平成24年豪雨とは異なる場所で氾濫

 国土交通省や都道府県が管理する大河川は観測所で水位を常時監視しているが、上流部や支流の中小河川には観測所がない。中小河川の流量が推定できるようになることで中小河川の実態解明が進めば、今後課題になってくるのは、実態に基づく防災対策だ。

 九州北部では平成24年7月にも豪雨に見舞われている。気象庁によると4日間降り続いた大雨により、熊本、佐賀、福岡、大分の各県で総雨量500ミリを超えた観測所が計5地点、7月1カ月分の1・5倍以上となった観測所も2地点あった。河川の氾濫や土石流で死者・行方不明者計32人、家屋1万3263棟が被害を受けた。

 この豪雨の後、国交省は九州北部の花月川、山国川、白川、矢部川の4河川で計398億円かけ、川の中を広げたり堤防を高くしたりする工事を行った。これらのうち花月川と山国川は今回も大雨エリアと重なっており、花月川の一部で浸水したものの、決壊した24年より被害が軽微だった。

 一方、福岡県が整備する河川では平成24年の九州北部豪雨の後、県内10河川について約278億円で対策工事を行ったが、今回氾濫した朝倉市内の河川は含まれていなかった。

 福岡県の担当者は「大雨になったエリアが今回は違った。仮に重なったとしても、あれだけの土砂と流木が発生していれば機能しなかった恐れもある」と説明する。

国家300年の計を

 これまで行われてきた中小河川のハード対策は、実際に被害のあった場所から行われてきた。しかし、再び同じ場所が豪雨に見舞われるとも限らない。有識者は長期的視点からの対策の必要性を説く。

 例えば、低地が多いオランダでは政府が300年規模で計画を立てて防災対策を進めてきた。中大理工学部の山田正教授(防災工学)は「日本ではこれまで、中小河川での防災対策は『無駄』とみなされる雰囲気があり、部分的にしか対策されてこなかった」と指摘する。

 その上で「今から莫大な予算はかけられないので、少ない予算で被害を最小化できるよう工夫して知恵を出し合い、面的な整備で防災力の底上げをしていくことが必要だ」と述べた。

産経ニュース

トピックスRSS

ランキング